愛情には、いろいろあるけれど、これは!
< 本文は:物語風に3分 >
目次
1.タウパの前書き <よっぱらいは、嫌われてる>
2.闇のなかの兄弟のやりとり
3.きびしい兄
4.取っ組みあいも辞さない
5.判断するのは年配者
6.父親が手をくだす
7.3度の愛のムチ・ようしゃしない
8.まとめ <ほんのすこしでも思ったら>
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き <よっぱらいは、嫌われてる>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
集落では、
結婚式やお葬式の催しだとしても、
お酒はのみません。
それだけ、
よっぱらいが、嫌われてるんだってばぁ。
2.闇のなかの兄弟のやりとり
乾燥したヤシの葉の芯が、大人の腰ぐらいの高さに、しきつめてあります。
その高床に、厚手の葉をあんだ寝具をならべ、どふぁらとタウパが、海からふいてくる風にあたりながら、ねむっていました。
母屋から聞こえてきます。
「まて、なにをしてる。それをどうする――」
兄の声で、鋭い言い方でした。
「どうもしない」
答えたのは弟です。
≪なにごとずら――≫
どふぁらが目をさまし、母屋のほうをむいてあぐらをかきました。
3.きびしい兄
≪青白いずら。ヤシの木にかこまれた敷地に、宇宙からの光がみちてるずら≫
細長い葉のかさなる母屋の屋根が、てらされています。
軒はどふぁらの座る床ぐらいの高さでした。
≪島のれんちゅうみたいに、夜目がきかないずら。家のなかは、まっくらずら。おっ!≫
「どうもしないなら、どうして道具をもってる」
≪みえてるずら。おそろしい目ずら≫
「それをもとの場所へもどせ、作業のたいせつな道具だ」
「………」
≪答えないずら。おっ! 床にしかれたマットを、けった音がしたずら≫
「待て、にがすか――」
4.取っ組みあいも辞さない
≪青白い光のなかへ、弟が飛びだしてきたずら。うっ、はやっ。もう兄が――≫
ふたりともプロレスラーのような、いい体をしています。
≪かたい地面を素足でけって、弟がつかまったずら≫
兄は30すぎ、弟はその3~4才したです。
≪こわっ! 取っ組みあいずら≫
手が手をはらい、分厚い肉と肉がぶつかります。
≪兄がたおしたずら。そのまま馬乗りずら≫
「よってるな。道具は、酒とこうかんするためか――」
≪さすがずら。弟を観念させたずら≫
兄がたちあがりました。
5.判断するのは年配者
兄がりょう手を腰にあて、その顔をあぐらをかいた弟がみあげます。
「クンやガテには、いわないでくれ、たのむ」
≪クンはひいおじいちゃん、ガテはおじいちゃんずら≫
「前回は、おまえのたのみを聞いた。だがこうしてまた、酒をのんだ。今回はクンやガテにつげる」
≪きびしいずら。そんなこというから――≫
弟がななめに飛ぶようにたちあがりました。
≪おそろしい格闘ずら。よくケガしないずら≫
兄が弟をたおし、おさえこみました。
「たのむから、いわないでくれ」
≪しぼりだすような言い方ずら≫
弟がヤシの実の繊維をあんだ縄でしばられ、地面にころがされました。
6.父親が手をくだす
母屋の床は20人ぐらいが、ねむれるような広さです。
一面にヤシの葉をあんだマットがしかれ、枯れて茶色くなっていました。
床をぐるりとかこむ軒下からさしこんだ陽光が、屋根裏の高いところまで明るくてらしています。
≪このために高くつくったわけじゃないずら。緑色をしたわかいヤシの葉の芯が、まっすぐうえにのびたずら≫
腰に茶色い布をまいた父親が、りょう手を高くあげて芯をにぎり、足を前後にひらいてたっています。
≪わかい芯は、水分をふくんで重いずら。これはきついずら≫
父親のまえに、弟がしばられたままうつ伏せになっています。
「もうぜったいに、酒はのまない。かんべんしてくれ、おねがいです」
≪うわっ! 父親のうでの筋肉が――≫
顔をそむけました。
尻を打つ切れのいい音がひびきます。
7.3度の愛のムチ・ようしゃしない
≪ほかの家族は、弟をきのどくに思い、どこかへいっちまったずら。おいらは親父にのこるようにいわれ、床のはしにあぐらをかいてるずら。どうしておいらが――≫
腰にまいた茶色い布に、わかい芯がふりおろされました。
≪そりゃあ痛いずら≫
弟がいっぽうのほほをマットつけ、涙をながしています。
≪親父はすごいずら。顔色ひとつかえずに、しかも無言ずら≫
みたび芯の先が、屋根裏をつくようです。
≪うわっ、みてられないずら≫
切れのいい音がたちました。
父親が芯の先を床につき、どふぁらにむきました。
≪なぬっ! 背筋がのびるずら。んだが、おいらは悪いことしてないずら……≫
「家族だ。たとえおまえだとしても、ようしゃしないからな」
8.まとめ <ほんのすこしでも思ったら>
こんにちは、どふぁらずら。
島の秩序は、歳のいった者の誇りによって、まもられてる。
過激ずら。
んだが、家族の愛情ずら。
もしも、
こんな父親や兄がいたら、自分がかわってる。
ほんのすこしでも思ったら、踏みだすずら。