自信をとりもどす:別の能力をのばして




*目にやさしい背景色を使用*











やっとまえをむけたから。








< 本文は:物語風に5分 >


目次

1.タウパの前書き

2.バカにされる

3.カッコわるいから

4.現実逃避、もういやだ

5.にげられない

6.うちのめされた

7.バカにされるのはもう

8.自信をとりもどすきっかけ

9.別の能力との出会いへ

10.別の能力と出会う

11.別の能力をのばす・もうバカにされない

12.まとめ








それでは、物語のように、どうぞ















― そこは、さんご礁にかこまれたしげる島 ―








1.タウパの前書き


こんにちは、島に住む10才のタウパです。

島の男の人たちは、魚をとるのが、じょうず。

漁へいくとみ~んな、

魚をいっぱい、持ってかえってくるんだってばぁ。

だけど、ギーニさんは、

かわいそう。


















 2.バカにされる

ギーニとその息子のジタンが漁からもどり、集落を二分する道へはいって、頭上をパンの木の枝葉がおおいました。

まえからギーニと同年代の男がふたり、あるいてきます。

「おい、みろよギーニ、今日も息子といっしょだぜ」

「あんなヘタクソとは、だれもいっしょに漁へいこうとしないからな」

 ギーニとふたりの男は腰に茶色い布をまき、ジタンは裸でした。

「ギーニ、今日は少しは魚がとれたのか? みせてみろよ、背中の袋」

ギーニがうつむきました。

「お父さん、袋をまえにだしなよ」

袋は、茶色くて厚い布からできています。

ギーニがあるきながら、袋の口をにぎった腕を、まえにつきだしました。

「おまえ、そんな持ち方したら――。笑っちまうな。中をみせてみろよ」

ふたりが立ちどまり、ギーニが袋をひらきます。

「やっぱりこれっぽっちか。なさけねぇ、それでも男か」

「ないない、これじゃあ子ども以下だ」


















 3.カッコわるいから

あかるい声でした。

「おかえりなさい。つかれたでしょう」

ギーニの妻が、火をつかう小屋からでてきました。

手製の茶色いワンピースを、ダボッと着ています。

ジタンが母親をまえにして立ちます。

「お母さん、お父さんと漁へいくの、もういやだよ。お父さん、カッコわるいんだもん」

「そんなこといわないで、漁はひとりじゃたいへんなんだから、手伝うのよ」

 お母さんが、漁獲のはいった袋の中を、たしかめます。

「たくさんとれたじゃない。ひとり2尾ずつは、食べられるわ」

ジタンが顔を、お母さんにむけました。

「でもどの魚も、大人の手のひらくらい小さいんだよ」

「今日は貝もあるから、魚がこれだけ食べられれば、じゅうぶんよ」 


















 4.現実逃避、もういやだ

ギーニが井戸を背にしてあるき、頭の上でヤシの実の殻を、ひっくりかえします。

水をあび、からだから潮をながしました。

作業用の腰布から、比較的状態のいい腰布にかえ、母屋の床に横になりました。

床にしかれたヤシの葉をあんだマットの下には、砂が10センチほどの厚みではいり、ギーニのからだをやさしくうけとめます。

≪息子のまえなのに、ひどいこといいやがって、あいつら≫

あおむけになったギーニが、りょう手を頭の下でかさねました。

≪へたくそなのが、わかってるくせに。くっそ~≫

ギーニの視線が、屋根裏に刺さります。

屋根をおおう屋根材の葉が、整然とならんでいました。

≪あ~~~~もう、漁へいきたくねぇ。俺には魚が、とれねぇ≫


















 5.にげげられない

「お父さん、魚、きのうも食べてないんだよ。今日は魚、食べたいよ」

ギーニが体をまわし、ジタンに背中をむけました。

「そうやって、ねてばっかりじゃないか。魚が食べたい」

「おまえ、俺と漁へいきたくないんだろう?」

「そうだけど毎日、貝とかゴカイとかじゃ、やだよ」

ギーニは動こうとしません。

「バカにされたって、いいじゃないか。お母さんが、少しあればいいっていうんだから。ぼくも少しでいいから、漁へいこうよ」 


















 6.うちのめされた 

息子と漁へいったギーニが、家にもどりました。

井戸で水をあびます。

繊維をあんだひもが結ばれているのは、ヤシの実のひときわ大きな殻のうつわです。

井戸からはなれると、頭の上でうつわをかたむけ、ゆっくり水をこぼします。

≪よりによって、またあいつらに。だからいきたくなかったんだ≫

ひもは2メートルほどの長さです。

井戸へ殻のうつわをおろしました。

≪もうぜったいに、漁へはいかねぇ≫ 


















 7.バカにされるのはもう

「お父さん、もう3日も魚を食べてない。魚を食べたいよ。ねぇ、おきてよ」

ギーニが腕をのばし、息子の胸をおします。

「おまえがなんていおうが、俺は漁へはいかない。うるさいぞ。おとなしくしてるんだ」

「おとなしくなんてしない。お母さんだって、魚が食べたいんだから。お母さんが、お父さんにたのめって、いったんだ。ねぇ、漁へいこうよ。魚が食べたい――」

ギーニがおきあがりました。

「俺はもう、バカにされるのはごめんなんだ」

きつい言い方でした。

「お母さんと貝でもとりにいけ」 


















 8.自信をとりもどすきっかけ

あわてたお母さんの声です。

「こんなに血をながして、どうしたの。お父さん、はやくきてください。指が、ジタンの指が」

とびおきたギーニが母屋をとびだし、火をつかう小屋のまえに立ちました。

「ひとさし指が、ぱっくり切れてるじゃねぇか。どうしたんだ」

ジタンのほほに、涙をぬぐったあとがついています。

「カニが食べたくて、とろうと思って、木の根っこのすき間に手をいれたら……」

「浜にいるようなカニが、いくら大きくたって、そこまで指を切るのはムリだ。カニはカニでも、普通のカニじゃねぇ。人間の指なんかかんたんに切断する、ハサミと力を持ってる。ぱっくり切れただけで、すんで幸いだ」

ギーニがジタンの頭を、胸にだきました。

「指があってよかったな。よくやったぞ。うまくにげたんだ」 


















 9.別の能力との出会いへ

ギーニがヤシ林をあるいています。

 人があるいてできた道からはずれ、草むらや雑木のあいだをすすみました。

≪ジタンにみせてやるか。どんなやつに指を切られたか≫

ヤシの木の根は、たくさんのツルです。地面に入るはずのツルが、幹の根元で幹よりひと回り大きくふくらんでいます。ツルがギュッとつまっているはずですが、すき間ができていました。

林には、パンダナスの木もおおく、立っています。

パンダナスの木はタコの木ともよばれ、幹の根元がタコの足のように何本にもなっています。手首ほどの太さの根が交差し、中に暗闇をつくっていました。

≪ジタンは、根のすき間っていってたが、ヤシとパンダンス、どっちの木の根に、手をいれたんだろうな?≫




 













 10.別の能力と出会う

≪1匹とれたらじょうできだ、と思ってきたのに、2匹もとれちまった≫

ハサミを持つ腕をしぱって、ギーニがりょう手にさげています。

血を吸うダニが巨大になり、長い腕の先にハサミを持ったようなすがたです。ハサミをいれば体調が50センチ以上、ザリガニのような色をしたヤシガニでした。

足や腕の肉はたんぱくな味で食感がよく、腹につまった味噌をつけて食べれば、ココナッツ風味です。

食べごたえがあって美味ですが、かんたんにみつからない上に、ハサミが危険です。

ギーニが一方の腕をあげ、しみじみとヤシガニをみました。

≪海で、どこに網をかければ、魚がかかるのかわかるらしい。それとおなじなのかもしれない。こいつのいる木の根が、わかる気がしたぜ≫















 11.別の能力をのばす・もうバカにされない

2匹もとれて気をよくしたギーニは、ヤシの葉でつくった口の丸いカゴを、背負って林へはいりました。

どの木でも、というわけではありません。

ヤシの木やパンダンスの木の根に、目がいきました。

するとそこにヤシガニがいます。

ギーニはとってかえったヤシガニと、魚を交換しました。

「おまえ毎日、よくこんなにたくさん、ヤシガニがとれるな!」

 ギーニが笑みをうかべます。








 12.まとめ







こんにちは、どふぁらずら。

海の漁がにがてだったギーニは、陸の漁にすぐれた面を持っていた。

ほかに持つ能力、

それをのばしても、自信をとりもどせるずら。




おっと!

こっちは、ポジティブをとりもどすずら。

・ネガティブとの差 >