もうすぐみんなといっしょ。
< 本文は:物語風に4分 >
目次
1.タウパの前書き
2.みんなのほうをむいてる子
3.遠くにいるけどおなじ場所
4.協調性のはじまり
5.さそってあげれば、もしかしたら
6.子供どうしだから、いいのかもしれない
7.みんなといっしょに
8.まとめ
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
この集落にも、
保育園や幼稚園みたいなところがある。
そこには、
ぼくみたいな小学生が入れる。
ぼくよりもっと、お兄ちゃんやお姉ちゃんも、
お手伝いするんだってばぁ。
2.みんなのほうをむいてる子
集会場の、葉をふいた屋根の下は、広々としていました。
床一面にヤシの葉をあんだマットが敷かれ、枯れて茶色くなっています。
その一角に、6才ぐらいまでの子が、集まりました。
はだかの子供たちが、若い女の先生にむいて、あぐらをかきます。
先生が顔を、横へむけました。
「シリちゃん、どうしたの、こっちだよ」
シリちゃんは、5才の女の子です。
屋根をささえる柱の横に立って、みんなのほうをみています。
「シリちゃんもこっちにきて、みんなといっしょに、お話を聞かない?」
先生が言いますが、シリちゃんは答えません。
「シリちゃんは、そこでいいの?」
先生がやさしい目を、シリちゃんにむけています。
ほほ笑みながら、シリちゃんの返事を待ちました。
「先生の声、聞こえる? なんていってるかわかるぐらい、ちゃんと聞こえる?」
シリちゃんが、小さくうなずきました。
3.遠くにいるけどおなじ場所
シリちゃんと話を終えた先生が、立ちあがりました。
長方形の床をかこむようにして屋根をささえる柱が、間隔をあけて立っています。
シリちゃんのいる柱より、もうひとつ先の柱のかげに、5才の男の子がみんなに背をむけて、しゃがんでいました。
男の子が、敷いてあるマットの、やぶれたところからのぞく、白い小石を指で動かします。
先生が男の子の前に、両膝をつきました。
「カイエ君も、みんなといっしょにお話を聞かない?」
カイエ君が、小石を指でつっつきます。
「みんなといっしょに、聞きましょうよ。海で泳いでるお魚とお魚の、結婚するお話なの」
先生がカイエ君の、返事を待ちます。
「カイエ君はお話より、石で遊んでるほうがいいの?」
カイエ君は、下をむいたままです。
「それじゃあ、お話が聞きたくなったらきてね」
先生が立ちあがりました。
4.協調性のはじまり
みんなを前にして先生が、あぐらをかきました。
「はじめるわよ、みんないいかな?」
先生が、シリちゃんとカイエ君に歩みより、ふたりに聞こえる大きな声で、お話をはじめました。
シリちゃんの片方のつま先が、ほんの少し前にでます。
カイエ君の一方の耳が、わずかに先生のほうへむきました。
シリちゃんとカイエ君が、先生に歩みよりました。
シリちゃんとカイエ君の、協調性のはじまりです。
5.さそってあげれば、もしかしたら
次の日は日曜です。
子供たちが先生の前に集まり、あぐらをかいています。
シリちゃんが、柱の横に立っています。
タウパがシリちゃんの前に、両膝をつきました。
「昨日先生がしてくれた、魚と魚の結婚するお話、おもしろかったよね」
シリちゃんが、小さくうなずきます。
「今日は、砂浜を歩いてるヤドカリと、ヤドカリが結婚する、お話なんだよ」
シリちゃんの表情が、少し明るくなりました。
「ここに立ってないで、今日はあっちに座って、お話を聞こうよ」
シリちゃんが片手をゆっくりあげ、口元にひとさし指をあてました。
「昨日、ぼくが座ってたでしょう、みんなの後ろに。今日もそこに座るから、ぼくの横に、シリちゃんが座ればいいよ。ぼくといっしょに、お話を聞こう」
シリちゃんが口元から、指をおろしました。
「ねぇ、シリちゃん。カイエ君もさそおうよ。いっしょに先生の話を、聞こうって」
シリちゃんの片手の横に、タウパが手のひらをだしました。
シリちゃんの手が、タウパの手のひらのほうへゆっくり動き、その手をタウパが、そっとつかみます。
「ほら、みて、あそこにカイエ君がいるんだよ」
6.子供どうしだから、いいのかもしれない
カイエ君がしゃがんで、石で遊んでいます。
タウパが、カイエ君とむき合うように、あぐらをかきました。
「カイエ君、昨日の先生の話、聞いてた?」
カイエ君が下をむいたまま、うなずきました。
「結婚してもいいよって、女の子の魚に、言われた男の子の魚が、うれしくって、うれしくって、すごいスピードで泳いで、鯨の口からおなかへ入っちゃったの、おもしろかったよね」
タウパが、楽しそうに話します。
「今日は、砂浜を歩くヤドカリの話なんだよ」
カイエ君が、顔をあげました。
「男の子のヤドカリが、女の子のヤドカリに、結婚してくださいって、おねがいするんだけど、そのときに男の子のヤドカリが、はずかしくて、はずかしくて、足をもじもじ動かすから、背中にしょってる貝が、もじもじ動くんだ」
タウパがヤドカリをまねて、体をもじもじさせました。
「今度はヤドカリが、手をもじもじこすり合わせるから、また貝がもじもじするんだよ」
タウパが手をすり合わせ、体をもじもじさせます。
「だから男の子のヤドカリが、なかなか結婚してください、って言えない。そのうち、もじもじ動かしてるから、背負ってる貝が、落っこちちゃうんだ。ぼく、そこがおもしろくって、このお話すきなんだ」
カイエ君が、ほほ笑んでいます。
「シリちゃんがぼくの、こっちの横に座るから、カイエ君は、ぼくのこっち側に座るといいよ。ぼくたちといっしょに、あっちで先生の話を聞こう」
立ちあがったタウパにつられるように、カイエ君が立ちあがりました。
7.みんなといっしょに
タウパが、あぐらをかいた子供たちの後ろに、座りました。
立っているシリちゃんとカイエ君に、笑顔をむけます。
「ふたりとも、ここに座りなよ」
タウパが、あぐらをかいた自分の両膝を、両手でたたきます。
「高くなって、先生の顔がよくみえるから」
シリちゃんとカイエ君が、タウパの膝に座りました。
「先生、いろんな顔をしながら話すでしょう。おもしろいよね」
8.まとめ
こんにちは、どふぁらずら。
シリちゃんとカイエ君ぐらいなら、
タウパみたいな子がいなくても、そのうち輪に入るずら。
協調性のはじまりずら。
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