辛いのを、わかってくれるから――。
< 本文は:物語風に3分 >
目次
1.タウパの前書き <男尊女卑だけど、やさしい>
2.重たい音・ヤシの葉をあんだウチワ
3.生まれてきてくれてありがとう・辛いのをわかってくれる
4.惚れなおす思い
5.まとめ <かんたんじゃない>
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き <男尊女卑だけど、やさしい>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
島では、
女の人より男の人のほうが、えらい感じです。
集落のことは、男の人が決める。
家のことも、おじいちゃんや、ひいおじいちゃんが、決める。
だけど、
男の人、女の人にやさしいってばぁ。
2.重たい音・ヤシの葉をあんだウチワ
葉をふいた屋根のしたでした。
ドスン、ドスン、と重たい音がひびきます。
あぐらをかいたおじいさんが、ひもにするヤシの実の皮を、たたいていました。
その床の一角に、厚手の葉であんだ寝具をしき、1才の女の子と0才の男の子が、はだかでねむっています。
ふたりへウチワが、そっと風をおくりました。
ふたりに寄りそうように、お母さんのジュグが横になり、ウチワを持った腕をゆっくりうごかします。
3.生まれてきてくれてありがとう・辛いのをわかってくれる
ドスン、ドスン、ひびいてくる音を、ジュグは心地よく感じていました。
重たいひびきが、子どもたちのねむりの中へ、ジュグの思いをとどけるようです。
ほんとうにありがとうね、生まれてきてくれて。おかげでお母さんは、家を離れることがなくなったわ。家でも、あなたたちの面倒をみてるだけでいいし、とっても楽になったの……。
あなたたちが生まれるまで、お母さんは嫁いでから10年ちかく、家のことをたくさんしないといけなくて、ひと晩ねむったぐらいじゃ、つかれがとれずに、朝から重たいからだにムチうって、たいへんだったんだから。
あなたたちのおじいさんとお父さんについて、漁にまでいってたのよ。
島のはんたい側の海へ、いくことが多かったけど、遠いでしょう。
ヤシ林を、おじいさんもお父さんも、ひと言も話さずにだまって歩くの。漁がはじまっても、おじいさんがお父さんに、あごをうごかして指示をするのよ。
も~、空気が重くて気持ちが沈んで、ほんといやだったわ。
お母さんは、ふたりといっしょに魚をおいこんで、ふたりが網からはずした魚を、ふくろに入れる役だったの。
帰りはお父さんが、ふくろをかついでくれたけど、おしりまで海につかって、歩いたり走ったり、もうへとへとよ。
家に帰ってきても、屋根にふく葉や、ひもの材料になるヤシの実の皮を用意したり、たくさん仕事があるでしょう。お父さんもヤシの実を集めたり、建物のこわれたところをなおすのに、材料が必要だったりして、林へ入ったわ。
お父さん今もそうだけど、あまり話さないでしょう。
お父さんに休みたいなんて甘えたこといえないし、休めないし、なんども逃げだしたくなったわ。
もう限界、逃げちゃおう、って思うの。
そんなことをお母さんが考えると、も~、お父さんたら、まったく――。
お母さんの足をつかうの。
母屋の屋根をささえる角じゃなくて角と角のあいだの柱に、よりかかるように座らせて、投げだしたお母さんの太ももに、頭をのせてねむるのよ。
お父さんは、ひと仕事もふた仕事も終えてるから、だれも文句をいわないわ。
お母さんも柱に身をまかせて、少しのあいだだけどねむれるの。も~、それが嬉しくて、嬉しくて、ほんとにたすかったわ。
お父さんは、家にだれがいても堂々と、そうしてくれるの。
俺には、こいつが必要なんだって、家の人たちにいってくれてるみたいで。
そしてお母さんにも、おまえが必要なんだって、いってくれてるみたいで。
お父さんが、そうしてくれなかったら、お母さんはたえられなかった……。
4.惚れなおす思い
ドスン、ドスン、重たい音がひびいています。
ウチワが、娘と息子へ、風をおくります。
ふたりのお父さんのテアキが、茶色い布を腰にまいた姿で、軒をくぐって入ってきました。
床の中ほどにあおむけになり、ねむりはじめます。
ウチワを持った腕を、うごかしながらジュグが、テアキに目をむけました。
≪子どもたちが、おおきくなって、わたしが忙しくなったら、きっとまた、わたしの足をつかってくれる……≫
ジュグはテアキの、ねむる姿をみて、惚れなおす思いでした。
5.まとめ <かんたんじゃない>
こんにちは、どふぁらずら。
かみさんに、惚れなおされる。
かんたんじゃない!
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