やさしいから、いっしょうけんめいに、まえをむいた。
そうしたらきこえてくる……
< 本文は:物語風に4分 >
目次
1.タウパの前書き
2.念のために先生にきいてみる
3.ウーペについてもきいてみた
4.きくのがこわいから
5.おしえてくれないから、つらい
6.気丈にふるまうウーペ
7.競争しなきゃ、でも……
8.風がうたう
9.風といっしょにうたう
10.まとめ
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
それぞれの島をまわって主島にかえる船が、おおよそ2カ月おきにくる。
その船に、描いた絵をのせるんだってばぁ。
主島で審査される。
ひとつ下の3年生の女の子のウーペも、1等賞や2等賞を楽しみにつづけてきた。
ぼくはダメで、もうやめようと思ったぐらい、落ちこんだことがある。
ウーペの気持ち、わかるってばぁ。
2.念のために先生にきいてみる
船は、ノートや鉛筆、塩やマッチなど、少しの日用品をはこんできます。
島からはヤシ油にする、日に干したヤシの実の果肉をはこんでいきました。
小学校の教室は、葉をふいた屋根を四隅の柱がささえています。
朝のホームルームを終え、茶色い服をダボッと着た女の先生が、屋根の下からそとへでました。
そのうしろにタウパが立ちました。
「先生、船がきたけど、報せはこなかったの? まえにきた船にのせたぼくの絵についてなんだけど」
3.ウーペについてもきいてみた
先生が立ちどまりタウパにむきました。
「ずっとがんばってきてるのにねぇ」
先生がざんねんそうに、まゆ毛をよせました。
「でも、タウパの絵は、じょうずだからつづけていれば、きっと賞がもらえるわ」
がっかりしたタウパが、顔をあげました。
「1学年下のウーペも、絵をだしてると思うけど、どうだったの?」
先生が首を横にふりました。
「そうなんだ。ウーペ、つらいだろうなぁ……」
自分がダメだったようにタウパが、ガクンと首をまえにたおしました。
4.きくのがこわいから
ヤシの木のあいだをつづく道を、下校する茶色い短パンすがたの生徒をおいこして、タウパがはしります。
≪あの小さい背中、ウーペだ。やっとおいつく。下をむいちゃって、やっぱり……≫
はしりながら心のなかでいいました。
「ふ~、おいついた。授業、ずいぶんはやく終わったんだね!」
横にならんだタウパに、ウーペが顔をむけます。
「ウーペは絵のこと、先生からきいた?」
ウーペが首を横にふりました。
「わたしきくのこわいから、きいてない」
元気のない言い方をしました。
5.おしえてくれないから、つらい
ウーペがつづけていいます。
「それに、賞をとってれば、先生からいわれると思って」
「ウーペは、がんばってきたもんね」
タウパがやさしそうな目をウーペにむけました。
「なんども挑戦してきたから、そろそろ評価されないと、きついよね?」
ウーペが下をむきました。
「わたしの絵の、へたくそなところとか、おしえてくれないのがつらい。どうすればいいか、わからないんだもん」
タウパは元気づけるような明るい口調です。
「その気持ち、わかる。ぼくもそれで、やめようと思ったから」
6.気丈にふるまうウーペ
白っぽい道にうつるヤシの葉の黒っぽい影を、ウーペが素足でふんであるきます。
「わたしはせめて、3等賞をもらうまでやる」
しっかりした口調でいいました。
「わたしの描いた絵、担任の先生、ほめてくれるもん。ぜったいに賞をとる」
タウパが笑顔になります。
「ぼくもウーペに負けないように、がんばらなきゃ」
「それじゃあ、どっちが先に賞をもらうか、競争するっていうのは?」
「それいい、やろう」
高いところを風がふき、ヤシの葉の影がゆれています。
7.競争しなきゃ、でも……
家にかえってノートと鉛筆をおいたウーペが、島のはんたい側までひろがるヤシ林へはいりました。
ヤシの木のあいだの草むらをはしります。
≪タウパと競争しなきゃ。タウパだってがっかりしてるはずなのに、わたしを心配してくれて……≫
ウーペがはしりながら、心のなかで思いました。
≪タウパが気づかってくれるから、あんなこといったけど、ほんとうはわたし、わたしもう……≫
ウーペが目に、なみだをうかべました。
8.風がうたう
まっすぐのびる幹のさきで、まるく放射状にひらくヤシの葉が風にゆれ、葉のこすれあう音がきこえています。
≪やめるなんて思ったらよくない≫
ウーペが前後に大きく足をひらいて、草を飛びこすようにはしりました。
≪タウパと競争しなきゃ。がんばらなきゃ……≫
目尻からなみだを、うしろへながします。
≪うたってる。わたしの耳にあたる風が、風が、うたってる≫
はしりながら手のこうで、なみだをぬぐいました。
≪おねがい風さん、わたしに元気をください≫
ウーペが素足で、いきおいよく草をけります。
≪うたってる、うたってる。きっとタウパに勝てる。タウパより先に賞がとれるって。風がうたってる……≫
9.風といっしょにうたう
≪わたし、いっしょうけんめいに描くから≫
大きくまえにだした足で、まだわかい草をふみます。
≪わーい、きこえるよ、きこえる。からだが軽くなって、足がもっと遠くまでひらいちゃいそう……≫
つま先で地面をけりました。
≪風さん、とっても素敵。うたうのじょうず。どうもありがとう。わたしがんばるからね≫
ヤシの木のあいだが光にみち、ウーペが目をほそめます。
≪風さん、草を飛びこしながらわたしも、心のなかでいっしょにうたう――≫
10.まとめ
風がうたってる。
必死にまえをむくウーペを、
風だって、応援したくなるずら。
おっと!
こっちは、悩んでるずら。
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