口元が、ほんの少しゆるめば、大きな笑顔。
< 本文は:物語風に4分 >
目次
1.タウパの前書き <生きてる今しかない>
2.魚介は死んでも役に立つが、人間は腐るだけ
3.ちょっとしたことで
4.ささやかで大切な生きる意味
5.まとめ <人をどれだけ笑顔にするか>
1.タウパの前書き <生きてる今しかない>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
ほんとだ!
ニワトリやブタは、役に立つけど、
人間は死んだら――。
って、ことは、
今今今、今、やらなきゃ。
2.魚介は死んでも役に立つが、人間は腐るだけ
道が集落を、海側とヤシ林側に、二分しています。ヤシ林を背にする敷地の奥に、高床の家が建っていました。
ヤシの葉の芯を敷きつめた床は、4畳ていどの広さをして、大人が腰かけやすい高さです。
その中ほどに、葉をあんだ寝具をしいて、発熱した5才の男の子のトイピが、あおむけにねむっています。
どふぁらが脇にあぐらをかき、両手でトイピの片手を、そっとつつんでいました。
「トイピのお父さんとお母さん、まだかな? はやく帰ってくるといいのに」
どふぁらのいっぽうの肩に片手をかけ、立膝をしているタウパが、ヤシ林のほうへ目をむけます。
「あっ!」
と、口をひらきました。
「なんだ、ちがうや。漁から帰ってきた男の人だ」
ふたりとも腰に、くたびれた茶色の布を、膝丈にまいた姿です。
ひとりは漁獲の入った厚い布のふくろを、もうひとりは白い網を、いっぽうの肩にかついでいました。
ヤシ林をでたところから、人があるいてできた道がふた手にわかれ、いっぽうは敷地の脇をとおっています。
「魚介はいいなぁ、死んで、役に立つんだからな。俺たちを生かしてくれてる。感謝されるもんなぁ。それも大人や子供に関係なく、みんな食べる前と後に、毎回だぞ。それなのに俺たち人間は、死んだらくさるだけで、井戸水が悪くなるからって、集落からはなれた、さみしいところに、埋められる。なんの役にも立たない」
「まぁ、そういうな。俺たちだって、こうして魚介を獲って、家族から感謝されてるんだ」
「お前、礼を言われたことあるか?」
「そりゃあ、ない。だが、獲ってきた魚をみて、うれしそうな笑顔をするじゃないか」
「まぁな、がんばってよかったって気になるぜ」
話しながらあるく、ふたりの声が聞こえていました。
3.ちょっとしたことで
ヤシ林のほうへむいていたタウパの目が、パッと大きくなります。
「きた! こんどはトイピの、お父さんとお母さんだ。やっと帰ってきた」
ふた手にわかれた道をあるき、敷地へ入ってきます。
ふたりとも30代半ばです。お父さんは茶色い布を腰にまき、お母さんは茶色いワンピースをダボッと着ています。
「タウパ、トイピの具合はどうだ?」
そう言ったお父さんは、トイピの薬にする木の枝を手にしています。
「少し楽になったみたい」
足を床からおろしたまま、高床に腰かけたお母さんが、体をトイピのほうへたおしました。
「ほんとだわ。眉毛のあいだから、力がぬけてるわ」
お母さんが、うれしそうにほほ笑みました。
その顔を、どふぁらへむけます。
「どふぁらも看病してくれたのね」
トイピの片手を両手でつつみながら、どふぁらが静かにうなずきました。
お母さんが、トイピに顔をむけます。
「トイピ、よかったわねぇ、楽になって。今、お父さんが薬を、つくってくれるからね」
お父さんがヤシの葉のマットにあぐらをかき、二枚貝の片割れをつかい、枝から皮をそいでいます。
タウパが立ちあがり、お母さんにむきました。
「どふぁら兄ちゃんに、交代してちょっとしたら、トイピの眉のあいだから、力がぬけたんだよ。ずっとうごかないで、トイピの手をつつんでた。どふぁら兄ちゃんの手って、すごい」
「もしかしたらトイピは今、わたしのおなかの中で、ねむっているのかもしれないわね」*そのページはあとで
お母さんの目から、やさしさがあふれるようです。
お父さんが、ヤシの実の殻の茶色いうつわを持って、どふぁらのむかいにあぐらをかきました。
トイピを前にします。
「どふぁらの手が、効いたっていうじゃないか。だったらトイピは、もうだいじょうぶだ」
どふぁらがトイピの手から、両手をはなしました。
「トイピが、これを飲めればいいんだが、こうしても熱はさがる」
お父さんがうつわから液をすくい、その手でトイピの体をそっと、たたくようにします。
薬でトイピの上半身が、ぬれていきました。
頭や首、足のつけ根に、ていねいに薬をひたします。
トイピが、顔をうごかしました。
「う~ん」
小さな声をあげます。
お母さんが表情を、パッと明るくしました。
「お父さん、トイピが目を覚ましたわ」
「よし、それじゃあ、薬を飲ませるか」
どふぁらとタウパが、高床からおります。
どふぁらが軒に頭をぶつけないように、首を前にたおし屋根の外へでました。
軒先に立ったふたりが、陽光につつまれます。
お父さんとお母さんが、満面の笑みをふたりにむけました。
どふぁらとタウパは、胸の中まであたたかい陽が、さしこんだようです。
5.まとめ <人をどれだけ笑顔にするか>
死んだら役に立たない人間は、生きてるうちが勝負。
まさしく、生きる意味ずら。
どれだけ、人を笑顔にするか。
ささいなことで、笑顔になるずら。
おっと!
具合の悪い子が、母親のお腹でねむるページは。
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