< 本文は:物語風に4分 >
目次
1.タウパの前書き
2.今までとちがう
3.病気じゃない
4.交互におそってくる
5.体の異変からわかるストレス
6.ぜったいにまちがいない
7.目標になんて到底とどかない
8.素質がない
9.まじめすぎるから
10.挫折寸前
11.家族の役に立ちたい
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
どふぁら兄ちゃんが、なんだかへん。
くらい顔してる。
心が、つらいみたい。
体も、なんだってばぁ。
2.今までとちがう
母屋は、重なった葉が日差しをさえぎり、屋根のしたから飛びだしたどふぁらが、隣家とをへだてるヤシ林に駆けこみました。
腰にまいた茶色い布をすこしあげるのと同時に、腰をちょっとおとし心のなかでいいます。
≪なんどつづくずら!? またずら。今までならいくら下痢でも、集落のはずれにある用をたす砂浜までまにあったのに、便意におそわれてから、10も数えないうちに、尻の穴からふきだしちまう。せめてまえの浜へいきたい。んだが、草むらにはいるのが精いっぱいずら。泣けてくる……≫
3.病気じゃない
離れは床が、大人の腰ぐらいの高さに、乾燥したヤシの葉の芯をしきつめてあります。そこに厚手の葉であんだ寝具のマットをしき、どふぁらが横になっていました。
≪下痢がおさまったと思ったら、おいらのからだは、どうなっちまったずら。ここはいつも暑くて、子どもはすっぱだかで暮らすところずら。それなのに、さむいずら≫
どふぁらが腰にまいていた布のしたで、膝をかかえます。
≪かけたくても毛布なんて、島中さがしてもない。寒気がして全身がふるえるずら≫
片手で、すねや腕をこすりました。
≪こんなにさむかったら、風邪をひいちまうずら≫
4.交互におそってくる
≪ふ~、すこし楽になったずら≫
腕や足をこする手をとめました。
≪おっと、どうしたずら。こんどは体中が、ほてってきたずら≫
体にかけていた布で、腰だけをおおいます。
≪あつくて脂汗がでるずら≫
手のひらで、額や首から汗をぬぐいました。
≪どうしたことずら。また寒気が!≫
ふたたび腰布のしたで、まるまります。
≪体がこわれたずら。暑さと寒さが、交互におそってくるずら≫
5.体の異変からわかるストレス
数日して暑さと寒さの程度が、おだやかになりました。
≪これがストレスからだとしたら、おいらは海の漁と林の作業で、たてつづけに失敗したことが、精神的にそうとうこたえてるずら≫
寝具に背をあずけ、屋根裏にならぶ葉へ目をむけます。
≪これまで漁と作業どっちも、家族の足をひっぱらないように、必死にがんばってなんとかできるようになってきたずら。そこへきて失敗、慣れてきたころだけに、ショックが大きい。その大きさが体の異変からわかるずら≫
体を横へむけ、ヤシの木のあいだにひろがる海へ、目をむけました。
≪こんなところでストレスとは、ストレスはところかまわずずら≫
6.ぜったいにまちがいない
どふぁらが、しばらくして復活しました。
≪オノを手に、ヤシの木のあいだをつづく人の踏んでできた道を、素足であるくずら。気分も体調もわるくない、やっぱり作業はいいずら≫
道からはずれ、ヤシの木のあいだにしげる、雑木の横をすすみます。
1本の木をまえにして立ち、まゆげをグイッとよせました。
≪島のくらしは自分たちで、家を建てて食い物を獲る。まさしく働かざる者、食ってねむるべからず。んだからおいらは、修行をつんだずら。この木ならぜったいに、修理にてきした材料になる。まちがいないずら≫
自分のふくらはぎぐらいの太さの幹を、オノをふってたおしました。
≪なぬっ、見誤っただと! なかがフカフカずら。まだこのていどとは、おいらは、おいらは≫
地面にりょう膝をつき、よつばいになりました。
7.目標になんて到底とどかない
どふぁらのこぼしたなみだが、草をすべりおります。
≪ストレスで体がおかしくなるほど、真剣にやってきたのに、今までながしてきた汗は、なんだったずら≫
どふぁらがりょう手で、草をにぎりしめました。
≪海の漁や林の作業は、シンプルずら。んだが、おいらにはむずかしい≫
一方の手で、草をむしりとります。
≪目標にしてる島の人の、強くて優しい気持ち。こんなこともできないおいらには、到底そんな心はもてないずら≫
草をにぎった手で、地面をたたきました。
8.素質がない
目のまえの草のあいだをアリが、自分より大きな虫の死骸を、ひきずってあるきます。
その横へ次々と、なみだをおとしました。
≪役たたずのおいらは、アリ以下ずら≫
りょう肘をついて頭をかかえると、カサッと草をこする音がし、そっちへ顔をむけます。
草むらから飛びだした野ネズミが、ヤシの木をかけあがっていく姿を、体をおこしてみあげました。
≪木のうえで実や樹液をとったり葉を切りおとしたり、島ではあたりまえの作業なのに、できないずら。ヤシの木にのぼれないおいらは、ネズミ以下ってことずら――≫
ふたたび地面にりょう肘をつき、頭をかかえました。
≪素質がない。おいらには、あわないのかもしれない。心が、地の底へしずんでいく。くるしい、くらくてきゅうくつずら≫
9.まじめすぎるから
家にもどったどふぁらが、離れの高床にしいた寝具に、横になりました。
≪めちゃくちゃな高熱が、でてるずら≫
腰布で体をおおい、半日ほど経ちました。
≪脂汗がでたり寒気がしたりしたときは、手で顔や首をあおいだり腰布にくるまったりしたずら。んだがこの発熱は短いあいだに、あがったりさがったりするだけで、どっちの場合も気分は、たいしてかわらないずら≫
りょう膝をおり寝具のマットにふせて、頭をかかえました。
≪異常ずら。これじゃあ体がもたない≫
片手をすばやく尻にあて、高床からおりて浜へむかいます。
≪また便意ずら。うっ、いそぐと振動で、もれちまう≫
10.挫折寸前
≪ふ~っ、心の底から、ホッとするずら≫
膝をすこしまげた姿勢でしたをむき、足のあいだにおとした汚物に目をむけます。
≪恥も外聞もない。なさけないずら。んだが、おちこんだ気持ちのほうが、つらいずら≫
顔をあげ、まわりに人の姿をかくにんしました。
その目に、なみだをうかべます。
≪あきらめてこの島から去る。んだが逃げるようで……≫
りょう手を膝につきました。
≪おいらは、おいらは、どうすれば、どうすればいいずら≫
ながすなみだが、砂にしみこみます。
11.家族の役に立ちたい
どふぁらが腰をふかくおって母屋の軒をくぐり、70才をすぎたガテのまえにあぐらをかきました。
「タウパがおぬしを心配して、わしのところへきたじゃ」
ガテの横に、ガテの奥さんがすわっています。
「どふぁらはいつも、いっしょうけんめいですからねぇ」
「そうじゃ、おぬしは誇りたかい。品位をたもとうとしてるじゃ」
ガテが笑みを、グシャッとふかめました。
「どうじゃ、あまえてみるのは、家族じゃ。ひとりにうんと期待することはない。みんなでやればいいじゃ」
どふぁらにむいたおばあさんが、うれしそうに微笑みます。
≪期待がへるのは、さみしい。んだが心に、太陽がのぼる気分ずら≫
したをむいたどふぁらが、りょう目を一方の腕でかくしました。
12.まとめ
こんにちは、どふぁらずら。
ストレス、気張りすぎ。
体が、ぶっこわれるずら。
そのまえに、なんとかする。
んだが、
ストレスは、やっかいずら。
おっと!
こっちは、かっこわるいずら。
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