会いたい人が、いますか?
< 本文は、物語風に2分 >
目次
1.タウパの前書き <子供は怖がらない>
2.月のない新月の夜
3.海が大きく動く・満月のつぎに大きな力
4.かごのゆれがさそう湿った足音・名前を呼ぶな
5.つよく思うと死者に会える
6.まとめ
1.タウパの前書き <子供は怖がらない>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
子供はね、亡くなってるってしらないことが多い。
だから、
その人が、木の枝からぶらさがってたりすると、
おもしろがって、
近寄って見たり話したり、するんだってばぁ。
2.月のない新月の夜
タウパが高床から足をおろして、腰かけています。
「だって、浅くなった海を歩いて魚を獲るんだけど、普通の夜だと月の光がつよすぎて、魚が人間にきづいて逃げちゃうんだ。だから新月の夜にしか、できないんだってばぁ」
タウパの横にどふぁらが、腰に布をまいた姿ですわっていました。
「うううっ、うっ」
しゃべれないどふぁらが、うなりました。
それがタウパには、なんて言ったかわかります。
「そうだよ。潮がひくと白い砂の海底が、ずうっと遠くまで平らでしょう。だからリーフの縁の珊瑚があるところまで、歩いていって漁をするんだ」
暗闇を歩いて、半時間ほどかかります。
3.海が大きく動く・満月のつぎに大きな力
「へぇ~。新月のときって、地球と月と太陽が、直線になってるんだ。すごいなぁ、でっかい物差しだ」
タウパの片手が、闇をきるように動きました。
「ぼくにだって、わかるってばぁ。新月の日が、満月の日のつぎに、潮が大きく動く。すごいよね、大人の背丈より深かった海が、なくなっちゃうんだもん」
タウパの鼻息が、聞こえてきそうです。
「だから海を、リーフの縁のほうまで歩ける。深いところへもどらなかった魚が、珊瑚や岩のかげで寝てるんだ」
4.かごのゆれがさそう湿った足音・名前を呼ぶな
闇の中からタウパの声が、聞こえてきます。
「漁へいく人は腰に、獲った魚を入れるヤシの葉で編んだ、丸い口をしたカゴを、さげて歩いてるでしょう。そのカゴのゆれが、亡くなった人をさそうっていう、話しがあるんだよ」
腰にさげるカゴの、きしむ音が聞こえてくるようです。
「だけど、漁へいく男の人たちは、だれも亡くなった人のことを、考えてないんだって。そんなこと、忘れて歩いてるって」
島の者は夜目が利きます。
「沖へむかって歩いているとね、だれもいなかったはずのところに、人が歩いているんだって。ちゃんと湿った砂をふむ、足音がするんだよ」
水たまりのように残った海水を、ふむ音もします。
「その人が、亡くなってる人らしんだけど、その人にきづいて名前を呼ぶと、姿が見えなくなっちゃうんだ。だから集落の人たちは、名前を呼ばないように、って決めてる。だけど、そのときになると呼んじゃうんだ」
5.つよく思うと死者に会える
「それにね、今みたいに空に雲がひろがって、星の光がないときは、集落に亡くなった人が、よくでてくるんだよ。その人が亡くなったってことをしらずに、長いあいだその人と立ち話をした大人だっている」
タウパの声が、闇の中から聞こえています。
「亡くなったその人に会いたい会いたい、ってつよく思ってると、会えることがあるんだよ」
「うううっ、うっ」
「嬉しい気持ちがわかるって、どふぁら兄ちゃん、亡くなった人に会ったことあるんだ」
「うっ、うう」
「そっか、会いたい人がいるんだね。あっ!」
いそいで高床からおりたタウパが、走りだします。
大きな声でした。
「ロロー」
ロローは、タウパと仲良しだった犬です。
タウパが足をとめました。
「そっか、名前を呼んじゃうって、こういうことか……」
膝についたタウパの両手が、つよくにぎられていました。
6.まとめ
こんにちは、どふぁらずら。
亡くなった人、
集落ではよく、でてきたずら。
なんてったって、
空間も人も、澄みわたってたずら。
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