そんな気持ちが、何10年たってもかわらない。
もっともっと、いっしょにいたいよ。
どうして、いっちゃうの?
本文は:物語風に5分
<ふりがな> 小学3年生~
1.タウパの前書き
2.ふうふのどちらかが、どちらかにつたえるやくそく
3.頭と体が、ちゃんと動くうちに
4.ひとりでそっといく人・みんなに見送られる人
5.自分の足で天国へいく
6.あたたかい気持ちにつつまれて
7.大人のほこり、それとも親のあいじょう
8.空気のすんだ新月の夜・天国からおむかえが
9.まとめ
🍒 それじゃあ、物語みたいに、いくよ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
そう言われてみると、集落には、
ねたままの、
おじいちゃんや、おばあちゃんが、いないかも?
細い足でも、
つえをつかったり、かたをかりたりして、
歩いてるってばぁ。
2.ふうふのどちらかが、どちらかにつたえるやくそく
ゆかには、ヤシの葉をあんだマットが、しかれています。
クンは90才をすぎ、ハチはそのいくつか年下です。
ゆかに立ったハチが、こしをおろしてあぐらをかきました。
「クンには、話しておこうと思ってな」
つづけてハチの口が、動きます。
「わしは、あれといっしょに、天国へいくつもりだった。あれが、わけのわからんことを言いだして、頭がおかしくなったのがわかった。じゃからわしがやくそくどおり、そろそろじゃ、と、あれにつたえたじゃ。そうしたらつぎの朝には、いなかった。ひとりで、とっとと天国へいっちまったじゃ」
ハチが、自分のおくさんのことを話しました。
3.頭と体が、ちゃんと動くうちに
のき下から光が、家のなかへ入っています。
ハチがゆっくりしゃべりました。
「むすこやまごは、わしに言いにくいじゃ。頭がへんになっても、自分じゃわからん。じゃがもう、わしにつたえてくれる者はおらん」
ハチがかた手で、いっぽうのふくらはぎをこすりました。
「そろそろじゃ、体が言うことをきくうちに。歩けんようになってからでは、おそい。月がなくなったら、いくじゃ」
いくのは天国へ、です。
クンが顔を、横に座るカローアへむけました。
「わしらも、そろそろ天国じゃな、ばあさん」
カローアのしわのよったほほが、動きました。
「そうねぇ、私たちはいっしょに、いきましょう」
4.ひとりでそっといく人・みんなに見送られる人
クンが、ボアタをよびました。
ボアタは、タウパのいとこの16才のおねえちゃんです。
あぐらをかいているクンの前に、立ちました。
「集落の家をいっけんずつ、たずねるじゃ」
ボアタが、めんどくさい、と言わんばかりに、鼻にしわをつくりました。
「それでどうするの?」
「月のない新月の夜、ハチが空へあがる。そうつたえるじゃ」
ボアタが、おどろいたように目を、大きくしました。
5.自分の足で天国へいく
新月の夜にする漁があります。
漁へいく男たちは、しおが引くのを家で待っていました。
夜空から、星の光がふってくるようです。
家のたつ集落のなかを、道がとおっていました。
パンの木が、道の両がわに立ち、えだ葉がトンネルをつくっています。
ハチが道を歩きます。
こしにぬのをまき、えだをつえにしています。
ハチに、葉のあいだから入った光が、あたりました。
前をむいて、ゆっくり足を進めます。
6.あたたかい気持ちにつつまれて
木々のあいだにハチのすがたが、見えたり見えなかったりします。
家にいる者たちが顔をつきだしたり、横へいどうしたりしました。
みんなハチへ、目をむけます。
40才ぐらいの女が、ささやくように言いました。
「ひとりで先にいったおくさん、子供たちへの思いが、よっぽど強かったのかもしれないわねぇ」
「愛があれば、こそだ」
そう、50才ぐらいの男が、つぶやきました。
つづけて男の口が、動きます。
「自分のしめくくりは、頭がしっかりして歩けるうちだ」
「ハチさん、きのうから、なにものんでないらしいわ」
「林へ入れば、すぐに天国へいける」
「おつかれさま」
「ああ、ほんとうに、長いあいだ、おつかれさま」
集落の者たちが思い思いに、おわかれを言いました。
7.大人のほこり、それとも親のあいじょう
えだ葉のつくるトンネルが、終わりました。
道の両がわに、ヤシの木が立ちならびます。
みきの横に、ボアタとタウパが、立っていました。
タウパの問いに、ボアタが答えます。
「タウパはねどこで、ウンコやオシッコ、したいか? 頭がおかしくなって、へんなことやったり、言ったりしたいか。家の仕事、できないのに、食ってねたいか?」
タウパが、えがおになりました。
「うん、食べてねるだけがいい」
ボアタが、タウパの頭をたたきます。
「いたっ、いたいなぁ」
「自分の子供やまごに、めいわくをかけたくないんだ。大人のほこり、って言うのらしい。まだ小さい自分の子供が、具あいが悪くなって、死にそうになったら、自分のいのちをあげても、たすけたいと思う。その気持ちが、なん十年たってもかわらない。だから天国へいく」
タウパの顔が動きました。
「きたよ、ハチおじいちゃん、やさしそうな顔してる」
8.空気のすんだ新月の夜・天国からおむかえが
道がすなはまにつきあたります。
ハチが道をまがりました。
道がすなはまにそうように、ヤシの木のあいだをつづきます。
ボアタとタウパが、道にでました。
ハチのうしろすがたを、見送ります。
「ハチおじいちゃん、もう、おばけになってたりして?」
ボアタがまた、タウパの頭をたたきました。
「おじいちゃんに、しつれいだろう」
「だって、新月の夜は、死んだ人がよくでてくるってばぁ」
ボアタがおどろいたように、顔を引きました。
「ほら、ハチおじいちゃんのおくさんが、でてきたじゃん」
ハチの横を、おばあさんが歩いています。
9.まとめ
やぁ、どふぁらずら。
天国へいく、おじいちゃんおばあちゃんだって、
みんなと、わかれたくない。
みんなが、だいすきずら。
んだからこそ、天国へずら。
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