パパのいうことならきく。
< 本文は:物語風に2分 >
目次
1.タウパの前書き <いやがらせ>
2.なぜいわなかった
3.娘をしかるより先に
4.勇気をたたえる
5.お父さんの出番
6.棒にこめる思い
7.まとめ <娘の心と>
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き <いやがらせ>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
ふたりとも、5年生です。
女の子が女の子の背中を、
けっとばしたりするんだってばぁ。
けるリリちゃんは、背が高くて運動がよくできる。
けられるクウトちゃんは、運動より勉強ができる。
2.なぜいわなかった
葉をふいた屋根の軒先から、白いけむりが外へながれます。
火をまえにしてあぐらをかいたロズクが、小屋をまえにしてしゃがんでいる夫のツアへ、顔をむけました。
「ええ、その女の子たちから頼まれて、リリにクウトちゃんにいやがらせをするのは、やめるようにいったんですけど、リリ、つづけてたんですね」
「それじゃあリリが、クウトちゃんにいやがらせをしてたのは、たしかなんだな」
「ええ」
「どうして俺に、いわなかった」
「あなたは漁や作業で、いそがしいでしょう。わずらわせたくなかったんです」
3.娘をしかるより先に
立ちあがったツアが、茶色い腰布をしめなおします。
「あなた、リリは小学校から帰って、あそびにいってます」
「リリをしかるのは、あとだ」
「どこへいくんですか?」
「おまえは棒を、用意しておけ」
ツアが足ばやに歩き去ります。
娘からいやがらせを受けていた、クウトちゃんの家をたずねました。
母屋の軒先で、クウトちゃんと目の高さをあわせるように、腰を落としたツアが、クウトちゃんにあやまります。
つづけて事情をしらずに驚いていた、クウトちゃんの親に詫びました。
4.勇気をたたえる
クウトちゃんの家からの帰り道です。
頭上を枝葉がおおい、黒い地面に白っぽく木漏れ日が、ゆれています。
まえを小学生の女の子がふたり、ならんで歩いていました。
「きみたちじゃないか。待ちなさい」
ふたりの女の子が、ふりかえりました。
「えっ、ごめんなさい。でも、わたしたち、ウソをいってません」
「ああ、わかってる。きみたちがあやまる必要はない。おどろかせて、すまない」
ツアがふたりに歩みより、ふたりが目をつぶって、おびえます。
ふたりの頭に大きな手を、そっとのせました。
「そうだね、きみたちからしたら、大人の男はこわいだろうに、よくわたしにいってくれたね。ふたりともえらいぞ、友だちのために。娘のリリが、めんどうをかけてすまなかった」
5.お父さんの出番
棒がおしりをたたく、切れのいい音がしました。
リリの泣き声がひびきます。
「やだ、ぶたないで、これからはお母さんのいうことも、ちゃんときくから――」
ツアの片手が、リリの一方の肩をつかんでいます。
「ごめんなさい。もうしない。人がいやがることは、よくないって、わかってる。クウトにちゃんとあやまるから」
「手をどけなさい」
リリのりょう手が、おしりをかくしたり、おしりからどいたり、戸惑うようにいったりきたりしました。
「手をケガするぞ。たたくのは、3度だけだ。そうだ、そのままだ。しっかり受けとめるんだ」
6.棒にこめる思い
海が夜空をうつしています。
浜辺にならぶヤシの木のよこに、ツアが立っていました。
「あなた、たいへんな役をすみません」
妻のロズクが横にならんで立ちました。
「わたしがちゃんと、いいきかせられたらよかったのに」
「いや、おまえはよくやってる。なぁに、リリは大きくなった。しりをたたくなんて、こんな役は、これで最後かもしれん。リリは、まっすぐに育つ」
「そうですね、棒には力がありますから」
「ああ、こめたぞ、こめた。おまえの思いも、これでもか、ってぐらいこめた」
7.まとめ <娘の心と>
こんにちは、どふぁらずら。
出番とはいえ、お父さん、たいへんずら。
一番たいへんなのは、
やっぱり棒。
棒をにぎって娘の心とむきあう。
思いがとどいて、まっすぐに育つずら。
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