暮らしをささえてくる、家族のような木……。
< 本文は:物語風に3分 >
目次
1.タウパの前書き <殺して食べる>
2.切りどき
3.暮らしをささえてくれる木
4.近しい人に殺される思い
5.命をひきつぐ
6.やさしいが――
7.まとめ <命とむきあえる>
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き <殺して食べる>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
ニワトリはね、草むらにたまごを産む。
誕生したキオキオたちが、
お母さんのあとについて、あるくんだ。
なんで一列になるんだろう?
かわいいんだってばぁ。
だけど、
大きくなったら、殺して食べる。
2.切りどき
となりの家とのあいだの、小さなヤシ林です。
そこへ道をおれて入ったのは、どふぁらとおなじような歳のナコでした。
「そりゃあそうだな、どふぁら。そのヤシの木は、切りどきだ。たおれたら家がつぶれる」
幹の横にたったナコが、ヤシの木をみあげました。
「なるほど。こいつなら、どふぁらひとりで、だいじょうぶだ。おまえでも、思う方へたおせる」
「うううっ、うう」
しゃべれないどふぁらが、うなりました。
「なに、手伝えって? そりゃあひとりじゃ、たいへんだからな。だけど俺はこれから、子どもたちが昼に食う、シャコを獲りにいくんだ」
3.暮らしをささえてくれる木
≪くっそー、だれかがいっしょにやってくれれば――≫
どふぁらが、オノをふりつけました。
≪ヤシの木は、甘みのあってうまい樹液を毎日、たくさんあたえてくれるずら。家を組みたてる紐だって、ヤシの実の繊維からつくる。魚を獲るタモだって、そうずら。おいらは母屋の床一面にしいた、ヤシの葉をあんだマットにあぐらをかいてくつろぎ、枯れ落ちたヤシの葉からとった芯を、ならべてつくった離れの高床に寝てるずら……≫
オノをふるどふぁらの肩を、日差しが焼くようです。
≪ほかにもヤシの葉は、雨や風をよけるスダレ、カゴやウチワにだってなってくれる。枯れ落ちた実の厚くせいちょうした果肉は、そのまま食ってもうまいし、しぼった液に塩をまぜて煮た魚は、ぜっぴんずら。それに液は体や髪にぬるあまい香りのする油になったり、ヤシの木には、めちゃくちゃ世話になってるずら≫
4.近しい人に殺される思い
ずっととおくの頭上で、ひらくヤシの葉のむこうに、白い雲がながれます。
≪だれかが、いっしょにやってくれれば――≫
ナコのあるきさった先には、海が青くひろがっていました。
≪いっしょにやってくれれば、気持ちがまぎれたずら――≫
オノのつくった切り口から液がながれ、木肌の色をふかめます。
≪くっそー、繊維からながれでる液、すきとおっててきれいずら≫
ふりつけたオノのとばす繊維が、陽光をうけてかがやきます。
≪液が、血に思えるずら。とびちってかがやくのは、ヤシの木のなみだ≫
幹にあてていた手で、自分のなみだをぬぐいました。
≪木が、ないてるずら。自分の存在をよろこんでくれていた、近しいやつらに殺される思い。つらいずら……≫
なみだをぬぐった目が、切り口をみつめます。
5.命をひきつぐ
≪ながれるのは根が、地中からあつめた水分ずら≫
切り口が、日差しをうけています。
≪その水分を繊維が、高いところへはこぶ。ものすごい生命力ずら≫
オノをにぎった腕が、横に大きくひらきました。
≪その生きる力を、おいらは絶つ。こいつを地面に、たおすずら≫
オノを幹に、思いっきりふりつけました。
≪ほんでもって、おいらはこいつの分まで、生きる――≫
とびちる繊維が、かがやきます。
≪木のなみだじゃない。かがやきは木が、精いっぱい生きた証ずら≫
いくつも、かがやきました。
≪おいらは、その命をひきつぐ。おいらといっしょに、生きるずら≫
6.やさしいが――
小さなヤシ林のりょう側に、葉をふいた屋根を柱がささえる、それぞれの家の母屋がたっています。
火をつかう小屋からあがった煙が、木々を背に白っぽくたちこめていました。
オノをふる腕から、汗がとびます。
≪島の人たちは、やさしい。イルカやカメを、人間どうように思ってる。ほんでもってヤシの木を、家族みたいにいうずら≫
視界のすみにうつる一方は、自分の家です。
≪みんな、やさしい。んだが、イルカやカメを、殺して食う。ほんでもってヤシの木の、命を絶つ≫
オノをふる腕が、とまりません。
≪つらい……。ここの暮らしは、つらいずら……≫
気持ちを、ふりつけるオノにこめるようです。
7.まとめ <命とむきあえる>
こんにちは、どふぁらずら。
命を絶つ。
つらいずら。
んだが、むきあえる。
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