そんな贈り物、もしかしたら、子どもだけに、できるのかも!?
本文は:物語風に5分
<ふりがな> 小学3年生~
1.タウパの前書き <じぶんよりもっと、相手をよろこばせたい>
2.来てくれて、めちゃくちゃうれしい
3.いいところを、みせたい
4.ふこうへいは、いやだ
5.ブタをあげても、よろこばない
6.行ったり来たりしながら・むねが苦しい
7.むかえに来てくれるのも、うれしい
8.すなはまに、たくさんのこってる
9.のこってるのは気持ち・めちゃくちゃうれしい
10.まとめ <子どもっていい>
🎀 それじゃあ、物語みたいに、いくよ
1.タウパの前書き <じぶんよりもっと、相手をよろこばせたい>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
うれしいことをされると、みんな、
それ以上に相手を、よろこばそうとする。
イモやブタを、
あげたりするんだってばぁ。
2.来てくれて、めちゃくちゃうれしい
タウパが心の中で、よろこんでいます。
≪小学校の授業をみてほしいって、たのんだら。どふぁら兄ちゃんが、来てくれた≫
地面に、葉をあんだマットがしいてあります。
そこに、子どもたちがあぐらをかいて、勉強をしていました。
教室は、葉っぱでつくった屋根のしたです。
屋根をささえる柱がありますが、かべがありません。
「どうぞ、中へはいって、座ってください」
茶色い服をダボッと着た、女の先生です。
「さぁ、えんりょなさらずに」
子どもたちの、うしろです。
どふぁらは、茶色いぬのをこしにまいた、すがたです。
マットに、あぐらをかきました。
3.いいところを、みせたい
子どもたちは、茶色い短パンを、はいています。
からだを前にたおし、ノートに計算をしています。
≪よぉし、ぼくがぜったいに、一番に答える≫
タウパが、手をあげました。
「465」
先生が、首をかしげました。
「はい、ほかにわかる人は、いますか?」
えん筆をにぎるタウパの手に、力がはいりました。
≪くっそ~、あわてない、あわてない。つぎの問題は、ちゃんと計算するんだ≫
タウパがまた、手をあげました。
答えをきいた先生が、ニッコリします。
「正かいです」
タウパが、ふりかえりました。
どふぁらにむかって、ガッツポーズを決めます。
≪やった、やった、やったー。どふぁら兄ちゃんに、みてもらえた――≫
4.ふこうへいは、いやだ
小学校から家に帰ったタウパが、すなはまへでました。
どふぁらが海につかり、からだを手でこすっています。
「うううう、うっ」
しゃべれないどふぁらが、うなります。
それが、なんていったのか、タウパにはわかりました。
「わかった、いまいく」
どふぁらがしゃがみ、両かたを海にしずめました。
そのかたにタウパが、両足をのせます。
どふぁらがいきおいよく立ちあがり、タウパがジャンプします。
タウパのからだが、ロケットのように飛びました。
「高っ! 気持ちいいんだってばぁ」
タウパが、海に落ちました。
≪こうやって、あそんでくれるのも、うれしいんだってばぁ。ぼくも、どふぁら兄ちゃんを、よろこばせたい。でもぼくは、どふぁら兄ちゃんを、かたにのせて飛ばせない。ぼくばっかりうれしくて、ふこうへいなんだってばぁ≫
タウパが海から、顔をだしました。
5.ブタをあげても、よろこばない
火をつかう小屋から、白いけむりがあがっています。
タウパのお父さんが、でてきました。
プロレスラーのように、大きなからだです。
走ってきたタウパが、お父さんを前にしました。
「ねぇ、どふぁら兄ちゃんに、ブタをあげてもいい?」
元気な声でした。
お父さんが、首をかしげます。
「なんのために、あげるんだ?」
「どふぁら兄ちゃんを、よろこばせたい」
「うちのブタは、どふぁらのブタでもあるからなぁ。あげてもよろこばないぞ」
「えぇ、そんなぁ……」
6.行ったり来たりしながら・むねが苦しい
タウパが小学校から、帰りました。
ブタにお水をあげたのに今日も、みんなのところへ、あそびに行きません。
そこは、あまり人の来ない、白っぽいすなのはまでした。
タウパが、したをむいて歩いています。
≪きのういっぱい考えたけど、ダメだった。だれかから、ブタをもらうことなんて、あきらめなきゃ……。どふぁら兄ちゃんを、よろこばせるには、どうすればいいんだ……≫
みんなの小学校にあるプールと、おなじぐらいの長さでした。
歩いたタウパが、ユーターンします。
≪どふぁら兄ちゃんに、ぼくよりもっと、もっとうれしくなって、もらいたいんだってばぁ≫
なんども、行ったり来たりしました。
≪どうすれば……、ぼくはどうすれば……≫
タウパが立ちどまり、むねに両手をあてます。
≪どうしたんだろう? むねが苦しい≫
思って、思って、たくさん思って、苦しくなりました。
7.むかえに来てくれるのも、うれしい
太陽が、水平線へちかづいていきます。
≪あ~、むねが楽になってきた。だけど、だけど……≫
タウパが、なみだを流しました。
どふぁらがタウパを、むかえにきました。
ヤシの木のあいだに、立ちます。
「うううううっ」
≪も~、ないてる顔を、みられたくないってばぁ≫
タウパがからだを、海のほうへむけます。
≪こうやって、むかえに来てくれるのだって、うれしいのに……≫
8.すなはまに、たくさんのこってる
すなはまへでたどふぁらが、タウパのほうへ歩きます。
どふぁらが顔を、右と左へむけました。
前の日に、タウパの歩いたあとが、のこっています。
どふぁらが足を、進めます。
≪またここにも、行ったり来たりした足あとが、長くつづいてるずら≫
その日に歩いたあとでした。
≪タウパは、なにをしてたずら?≫
海へむいていたタウパが、ふりかえりました。
「ぼくは、どふぁら兄ちゃんにぼくより、うれしくなってほしかった。だけど、いくら考えても、いくら考えても、どうすればいいか、わからない」
どふぁらが、タウパをだきよせました。
「ううっ、うっ、うっ」
タウパが、顔をあげます。
「すなはまにいっぱい、のこってるって、そんなのただの、足あとじゃないか。からだが、はりさけそうなぐらい、うれしいなんて、ウソだ!」
9.のこってるのは、気持ち・めちゃくちゃうれしい
「ウソだ、ウソだ」
タウパが両手をあげて、どふぁらのむねをたたきます。
「うっ、ううっ」
タウパがたたくのをやめ、どふぁらへ顔をむけました。
「えっ、すなはまにのこってるのは、気持ちだって、いっしょうけんめい考えた、ぼくの気持ち。それが、さい高の贈り物だって!」
どふぁらがからだを、海へむけます。
前には、でっかい太陽です。
どふぁらが、大声でうなりました。
タウパが表じょうをパッ、と明るくします。
「ブタを10頭もらうよりうれしい、めちゃくちゃうれしいって――」
タウパが、飛びあがりました。