言っても、言わなくても、ウソつきになる……。
本文は:物語風に5分
<ふりがな> 小学3年生~
1.タウパの前書き<ウソをつこうと思ってない>
2.言わないってやくそくした
3.やくそくしたから告げ口はしない
4.言ったらウソつき・だけど、リッ君も友だち
5.どっちも友だち・大切にしたい
6.ウソは人をイヤな思いにする・心がいたい
7.まとめ <みんなだったら、どうする?>
それじゃあ、物語みたいに、いくよ
1.タウパの前書き <ウソをつこうと思ってない>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
どっちも友だちなんだってばぁ。
ウソをつこうなんて思ってないのに、
だれかたすけてってばぁ。
2.言わないってやくそくした
家のたつ集落から、ヤシ林へ入りました。
タウパが、鳥のエサになる実を、さがしています。
「あっ、テアとロボだ。ヤシの木からおりてくる」
タウパが、立ちどまりました。
テアとロボが、地面におりました。
タウパに気づいて体を、ビクン! とゆらします。
せの高いほうのテアが、口をひらきます。
「おねがいだ、タウパ、いまみたことは、だれにも言わないでくれ」
テアとロボがどうじに、顔の前で両手をあわせました。
「たのむ、このとおり」
タウパが、ふたりのおりてきたヤシの木を、みあげました。
葉の根元からでた芽に、茶色くて丸いうつわがさがっています。
この木の世話をしている人が、ヤシのじゅえきをとっています。
じゅえきは家族の、大切なのみものです。
テアがかた手をタウパにむけ、指を2本のばしました。
「2つだけだから。3つうつわがさがっていたうちの、2つだけだから」
こんどはロボがかた手をだし、ひとさし指とおや指のあいだに、すきまをつくります。
「それに、ほんの少ししか、のんでないから。水でうすめる前のじゅえきが、うまいの、タウパも知ってるだろう」
じゅえきどろぼうです。
バレたらふたりは、お父さんにおしりを、ぼうでたたかれます。
タウパが、あごをひきました。
「わかった。だれにも言わない」
3.やくそくしたから告げ口はしない
つぎの日の朝でした。
ヤシの木のあいだを、道がつづいています。
みんな、茶色い短パンをはいて、登校しました。
小学校につくと朝礼です。
黒い土の校庭に、せいとがあぐらをかきました。
校長先生が、こしに茶色いぬのをまいたすがたで、前に立ちます。
かみには、しらががまざり、大きな鼻をしていました。
「ヤシのじゅえきは、集落のなかに立つ木や、集落のちかくに立つ木から、とられています。それぞれの家が、なん本かのヤシの木の世話をしていて、その木には世話をしている人から、ゆるしをもらわなければ、登ってはいけないことに、なっています。それはみんな、知っていますね」
校長先生が、せいとをかくにんするように、顔を左右に動かしました。
「ですが、かってにだれかが登って、じゅえきをのんでいるようです。もしも、このなかにそんな子や、そんな子を知っている子がいたら、どの先生にでもいいので、言ってください」
あぐらをかいたタウパが、下をむきました。
≪そんなこと言われても、テアとロボとやくそくしたから……≫
4.言ったらウソつき・だけど、リッ君も友だち
すなはまに、ヤシの葉がかげをつくっています。
そこに、小学校から帰ったタウパが、あぐらをかきました。
「この前はタウパが、話を聞いてくれて、たすかったよ」
リッ君が、横にすわりました。
リッ君は、タウパにとって話しやすい、おとなのお兄さんです。
いつも、やさしい話し方をします。
「小学校で、言われなかった? うちのじゅえきが、ぬすまれてるんだ」
タウパがせなかを、ピン、とのばします。
「うちは、あにきとおやじが毎日、朝と夕方にじゅえきを、とってる。だけど、夕方にとれるじゅえきが、へってる日が多いんだ」
タウパの黒いひとみが、右から左へ、左から右へ、いったりきたりしました。
「ぬすまれるのが昼間だから、子供じゃないかと思ってね。タウパ、なにか知らないかな?」
ひとみがいったりきたり、とまりません。
≪どうしよう、どうしよう≫
リッ君が、ほほえみました。
「こんどは、ぼくが話を聞く番みたいだね。タウパのむねにつまったことを」
リッ君が、立ちあがりました。
「タウパが、言いたくなったら、いつでも、ぼくの家へきて」
そう言って、はまをあがり、ヤシの木のあいだへ、入っていきます。
5.どっちも友だち・大切にしたい
すなはまにのこったタウパが、ひざをかかえました。
≪リッ君の家の、じゅえきだったなんて。ぼくはどうすれば、いいんだろう。言えば、テアとロボが、しかられる。いたい目にあって、かわいそう。言わなかったら、リッ君の家が、こまる≫
タウパの足の先を、白っぽいカニが歩いています。
≪それに、ぼくが言ったら、テアとロボに、ウソをついたことになるし、言わなかったら、リッ君に、ウソをつくことになる≫
タウパのかた手が、すなをたたきます。
≪ぼくはどうすれば、どうすればいいんだ……?≫
6.ウソは人をイヤな思いにする・心がいたい
つぎの日は土曜日で、小学校がおやすみです。
そこは、あまり人のこない、すなはまでした。
みんなの小学校にあるプールと、おなじぐらいの長さを、タウパが歩きます。
ユーターンして、おなじところをもどりました。
≪どうすれば、どうすれば……≫
つぎの日曜日も、下をむいてなんどもユーターンします。
足あとが、たくさんつきました。
≪ウソなんか、つきたくない。ウソをつかれると、すごくイヤな気持ちになる。そんなこと、したくないんだってばぁ≫
立ちどまって、海のほうへむきます。
オレンジ色の大きな太陽が、なみだでにじみました。
7.まとめ <みんなだったら、どうする?>
やぁ、どふぁらずら。
ウソは人をイヤな思いにする、
心がいたいずら。
みんなが、タウパだったら、
どうする?
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