つづけるのは大変:でも、いいことがある




*目にやさしい背景色を使用*











だれかのためにできたら、素敵ですよね。








< 本文は:物語風に5分 >


目次

1.タウパの前書き

2.おじいさんとおばあさんの花

3.他界・おばあさんがお花へ・夜に咲く

4.雨が降っても

5.体調が少しぐらい悪くたって

6.いつになることやら

7.新月の夜に会える

8.花といっしょに

9.うれしい顔

10.まとめ








それでは、物語風におくります














― そこは、さんご礁にかこまれたのしげる島 ―







1.タウパの前書き


こんにちは、島に住む10才のタウパです。

ここにでてくるレケさんは、40才をすぎた細身のおばさんです。

自分からすすんで幸せになった人で、べつのページで紹介しています。

そっちを先に読むと、レケおばさんが、

どうして親切なのかわかります。

集落の人はみんな、レケおばさんが好きなんだってばぁ。


















 2.おじいさんとおばあさんの花

そこはヤシ林の中の、草むらでした。

「レケ、レケ、やっとじゃ、やっとみつけた。これじゃ、これ」

「白い花なんて咲いてないわ。ほんとうに、これなの?」

「ああ、まちがいない。ずいぶん長いことかかったじゃ。レケに毎日、わしの杖のかわりに、なってもらって、ほんとうにたすかった」

「おじいちゃんのその笑顔が、私のちいさな幸せよ。私、歩き方がへんだから、横を歩くのたいへんだったでしょう」

「そんなことはない」

おじいさんがレケの肩につかまって、腰をかがめます。

「まわりの草より、頭を少しだしてるだけで、まだ若いが、大きくなっていつか、花を咲かせる。わしが、死んだらばあさんを、ここへつれてきてやってくれんか」

「なに言ってるのよ。おじいちゃんが、つれてくればいいでしょう。わたしが、おじいちゃんとおばあちゃんの両方、面倒みますから」

おじいさんが、小さく息をはきました。

咲かんのじゃよ。こいつはそう簡単に、花を咲かせん。わしは、そろそろじゃ。歩けるうちに、逝こうと思っとる


















 3.他界・おばあさんがお花へ・夜に咲く

それから少しして、おじいさんが空へあがりました。

日没と日の出の、ちょうどあいだぐらいの深夜です。

敷地の前をとおる道で待っていたおばあさんが、レケの肩に片手をおきました。

「こうやって毎晩いっても、レケがいっしょだから、安心だって。息子たち、なにも言わないの。ほんとに、レケにはたすかるわ」

集落からでて、ヤシ林の中をつづく、細い道をすすみました。

「ごめんなさいね、レケ、こんな遅くに。その花が、はじめて咲くのは夜なの。おじいさんとその花を見たのは、昼間だったけど、せっかくおじいさんが、さがしてくれたんですもの、はじめて咲かせる花を見たいわ」

ヤシの木のあいだの暗闇に、星の青白い光がひろがっていました。

道からはずれ、草むらをいきます。

立ちどまりました。

「あらあら、今日もだめね。明日は、咲くかしら……


















 4.雨が降っても

深夜、目を覚ましたレケが、屋根の下からでようとして、足をとめました。

≪少しだけど降ってるわ。お願い、すぐにあがって≫

いっぽうの肩を引き、いきおいをつけるように前にだし、軒をくぐりました。

枝葉が道をおおい、雨が大きなしずくになって落ちてきます。

おばあさんが着ている茶色いワンピースの肩が、色を深めていました。

「降ってきたわねぇ」

ドサッと大粒の雨が降り、サッとあがる場合が主でした。

「もうあがったわ。よかった」

その帰り道でした。

「なんど、雨に降られたかしらねぇ」

「ひと晩に2回は、めずらしいけど、数えきれないわ」

おばあさんとレケのあごから、水滴が落ちました。

「本降りになったわねぇ。私は古い人間だから、このぐらいへっちゃらだけれど、レケは寒いでしょう」

「あらっ、わたしだってもうなれたわ、どってことないわ」

「なに言ってるの、肩が小さくふるえてるじゃない。ふるえないように背中に力を入れて。なかなか花が咲かなくて、つらい思いをさせて、ほんとうに、ごめんなさいね」


















 5.体調が少しぐらい悪くたって

雨にぬれ、家に帰ったレケが、乾いた布で体をふきます。

ですが、冷え切った体が温まりません。

葉をあんだマットに横になり、膝をかかえて丸まりました。

東の空が明るくなるのを待って、浜へでます。

腕が胸の前で交差していました。

「ああ、生きかえる思いだわ。ほんとうにあったかい。太陽さん、どうもありがとう」

レケが片手をお腹にあてました。

「お腹、こわさないといいけど……」

下痢になることがしばしばあり、おばあさんに待ってもらい、レケはしげみで用を足し足し、歩きました。

危惧するおばあさんに、笑顔をむけて言います。

「だいじょうぶよ。お腹は、関係ないわ。わたしは、歩くだけですもの。おばあちゃんだって、熱をだしたりして具合が悪くても、くるじゃない。わたしだって花が咲くのを、見逃したくないわ」


















 6.いつになることやら

「今夜は、月が明るいわねぇ。こんな日ばかりだと、いいんだけどねぇ」

木々のあいだの空間が、金色がかっているようです。

レケがほほえみます。

「ほんと、歩きやすいし、気持ちがいいわ」

「明日が満月ね。なんどまんまるのお月様を、見たかしらねぇ」

「そうねぇ、もう15回は、真っ暗な新月の夜をすごしてるわ」

「そんなになるかしら。それじゃあ、そのあいだにひとつ、年をとったのね。はやいわねぇ」

「それにしても、いつになったら、咲くのかしら」

通いはじめたころは、まわりの草より背が高かった程度でしたが、大人とおなじぐらいの丈に成長しています。


















 7.新月の夜に会える

ヤシ林を歩くレケとおばあさんの腕を、風がなでていきます。

「今日は真っ暗ねぇ」

島の者は、夜目が利きます。

「また、新月がきちゃったわ」

 こんどは、心の中でささやきました。

≪あっ、だれかいる。おじいちゃんよ、おじいちゃんが、先を歩いてるわ≫

レケが横をむき、おばあちゃんと顔あわせ、ふたりがニコッとします。

レケが先を歩く人の背中へ、視線をむけました。

≪おばあちゃんも、おじいちゃんに、気づいてるわ。おじいちゃん、最初のころにも、きてくれたけど、それからずっとこなかったから≫

おばあさんが、とってもおだやかに言いました。

「そろそろ、咲くのかもしれないわねぇ」


















 8.花といっしょに

満月が、林をてらしていました。

レケの肩に、おばあさんが片手をおいて、草むらを歩きます。

レケとおばあさんが、目を大きくひらきました。

「あらっ!」

ふたりの足がはやまります。

「うわぁ、なんてきれいなの。小さくて白い花が、いくつも」

レケとおばあさんが、花を前にしました。

「ひとつひとつみると、健気ねぇ。わたしはね、林へ作業にきてて、この花の前でおじいさんに会ったの。そうしたら、結婚をもうしこんでくるのよ。なにがなんでも家族の許しを得るから、頼むって。おじいさん、この花をみて結婚しようと思ったんですって。あとからおしえてくれたわ。咲いていてくれたおかげで、わたしは幸せだったわぁ」

おばあさんが、レケに顔をむけました。

「わたし今夜は、ここですごすわ」

「わかったわ。朝、迎えにくるから」

おばあさんがうれしそうにほほえみました。


















 9.うれしい顔

幹のあいだから入る朝の初々しい光が、下草をかがやかせました。

「おばあちゃん、おじいちゃんに、会えたかしら」

レケは足取りが、はずむようです。

「おじいちゃんと、いっぱい話したんだろうなぁ」

レケが、立ちどまりました。

「あら、あら、おばあちゃん、花の前でねむっちゃって」

おばあさんが片腕をのばし、そこに頬をのせています。

レケが歩みよりました。

「も~、うれしそうな顔をして、まだ、おじいちゃんと話してるのかしら」

レケが地面に、両膝をつきました。

「えっ、もしかして!?」

おばあさんが、息をしていません。

地面に書いてあります。

レケ、ありがとう。








 10.まとめ







こんにちは、どふぁらずら。

レケみたいに、つづけるのは、たいへんずら。

んだが、いいことがあった。

おばあちゃんのうれしそうな顔と、ありがとう。

最高ずら!





🌈 おじいさん達のころに、自分達で結婚相手を決められたのは、よっぽどのことです。




おっと!

死者と会えるずら。

・澄みわたる新月の夜 >








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