こもり人のような孤高の人




*目にやさしい背景色を使用*











こもり人の中にはきっと、孤高の人がいる。

やさしい人以上に、やさしい人。








< 本文は:物語風に4分 >


目次

1.タウパの前書き

2.おだやかで、ふつうに親切

3.やわらかな笑み

4.とってもやさしい

5.あえてひとりならこもり人、それとも孤高の人

6.集落からはなれて暮らし、こもり人のよう

7.人とちがうが、すばらしい人柄

8.まとめ








それでは、物語風におくります














― そこは、さんご礁にかこまれたの葉のかがやく島 ―







 1.タウパの前書き


こんにちは、島に住む10才のタウパです。

ここに登場する男の人は、

あんまり会わないし、口もきかない。

だけど、

普通にやさしいんだってばぁ。

遊んでるぼくたちに、笑顔をむけてくれるんだってばぁ。


















 2.おだやかで、ふつうに親切

どふぁらは、林でひとり、作業をしていました。

枝を切りだしていて、いい枝をさがしているうちに、道に迷います。

日が暮れたので、ヤシの木によりかかるように座り、そこで夜をすごすことにしました。

すっかり暗くなって、まもなくです。

 男の声が、やわらかな言い方をします。

「どうしました?」

どふぁらが顔をあげ、前に立つ人影を確認しました。

悪い人はいないので人には驚きませんが、人の近づく気配に気づかなかったことに、すこし驚きました。

「集落へ帰れなくなったんですね」

男はどふぁらだとわかり、そう言ったようです。

「いきましょう」

男が背をむけて歩きだし、立ちあがったどふぁらがあとを追います。

星の明かりが枝葉にさえぎられ、男の影が闇にまみれました。

すぐに青白い光の中にあらわれます。


















 3.やわらかな笑み

ヤシの実の殻をわった器に灯る、オレンジ色の小さな炎が、ヤシの葉の芯をならべた床を照らします。

軒先から男が言ってきました。

「食べてください」

すっぱだかになって井戸で、汗とほこりを流したどふぁらは腰に布をまき、イモと日に干した魚を食べ、ヤシの樹液を飲みました。

こぢんまりとした広さの床です。

屋根裏にひもがはってあり、そこに丸めて収納していた寝具に、風をとおしたようでした。

「これをつかってください」

マットが丸まって高床におかれ、男の顔がゆれうごく炎をうけます。

≪まだ、若い。30代半ばずら。おいらより、5つぐらい上なだけずら≫

どふぁらは、男の落ち着いたしゃべり方やふるまいから、年がもっと上のように感じていました。

あぐらをかいたまま、背筋をのばします。

「うううっ」

うまくしゃべれないどふぁらが、お礼を言うようにうなりました。

炎の灯りが、男のやわらかな笑みをうつします。


















 4.とってもやさしい

どふぁらは火を消し、手さぐりでマットを確認し、あおむけになりました。

ふいてくる風がねむりをさそい、ほうきが地面をこする音のしない、静かな朝をむかえます。

木々のあいだが、みるみる明るくなっていきました。

高床のはしに、ヤシの樹液のはいった球状のヤシの実の殻と、それを飲む、殻をふたつにわった器がおかれ、その横には、緑色をした葉を皿がわりにして、白いものがふわっ、と盛ってあります。

ヤシの実の果肉を、けずったものでした。

果肉を殻から、はがすだけでじゅうぶんなのに、わざわざ、食べやすくしてくれてたずら≫

 どふぁらは寝具のマットを丸め、立ちあがってひもの上におさめ、朝食をいただきます。

















 5.あえてひとりならこもり人、それとも孤高の人

ヤシの木が立ちならび、その先の幹のむこうが、ひらけています。

人の踏みかためた道が、敷地からつづいていました。

ヤシの木のあいだから浜へでると、そこに広がったのは、見覚えのある海でした。

浅瀬が広がり、リーフのむこうの海が色をふかめています。

一方は、ヤシのしげる島が海のほうへ湾曲し、もう一方は集落の外れの、小さな半島へつづいていました。

どふぁらが、今きた男の敷地へもどります。

かまどの小屋と、どふぁらのねむった高床の家の、二軒が建っています。

≪島の暮らしは、人手がいるずら。ひとりで暮らしているとしたら、たいへんずら。あれは、もしかして!≫

かまどの小屋の横におかれた枝に、目がいきました。

手首ぐらいの太さをして、両腕を広げたほどの長さの、比較的まっすぐな枝が10本近く、ツルをつかって束ねてあります。

昨日どふぁらが、林で切りだした枝です。

≪かつぎやすいように、縛ってあるずら≫

やさしさを通り越し、誇りのようなものを感じました。

海とは反対がわへ、木々のあいだの草むらを道がつづき、見覚えのある道に合流しました。


















 6.集落からはなれて暮らし、こもり人のよう

敷地へ入ると、女の大きな声が響きました。

「帰ったか。ゆうべは、林でねむったんだな。やるじゃないか!」

どふぁらの従妹にあたる、16才のボアタでした。

どふぁらは肩から枝をおろし、かまどの小屋にいるボアタにむいて立ちます。

「うっ、うう」

「はらが減ったんだな。今、食わせてやる。母屋に座ってろ」

ボアタが、ヤシの葉をあんだマットを、屋根のつくる影にしきました。

「ほら、ここで食え」

ボアタは、口は悪いですが、気立てがいいです。

どふぁらが塩ゆでしたエイの切り身を、つかみました。

ボアタがマットに膝立ちになります。

「林で、おばけに会わなかったか?」

どふぁらが、口の中のものを飲みこみました。

「うううっ、う」

ボアタは勘が鋭く、さっしてくれます。

「だれかの家でねむったって。林の奥に家なんてないぞ」

ボアタが、パッと口をひらきました。

「まさか、テアラワのことじゃないだろうな! 林の奥じゃなくて、海の近くか?」

どふぁらが、うなずきました。


















 7.人とちがうが、すばらしい人柄

ボアタからテアラワについて聞いたどふぁらは、お礼にわたそうと考えていたイモを、持っていくのをやめました。

≪気やすく近づくべきじゃないずら。テアラワの生き方を尊重するずら≫

それからしばらくして、です。

テアラワには、たったひとり自分から話しをする、叔父がいます。

叔父のところへ、コプラの入った布の袋を、担いできた姿をみかけました。

船がくればコプラが、現金になります。

人をつよく避けているわけではないようですが、テアラワは集落でおこなう会合や催しに、くわわりません。

唯一正式に、葉を染めたりしてつくった衣装を身につける、歌とおどりが披露されるときには、集会場の外に立って、腰をかがめるテアラワの姿が、見受けられました。

集落の人にテアラワは、人とちがうが、すばらしい人柄だと言われています。








 8.まとめ







こんにちは、どふぁらずら。

テアラワは、こもり人みたいずら。

んだが、

おいらは、孤高じゃないかと思う。

それも、

へんな意味のまざらない、気高いほうによった。

やさしい人以上に、やさしい人ずら。




おっと!

こっちは孤高と、正反対ずら。

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