つたえよう、だきしめて、小さな胸のうちをたいせつに。
< 本文は:物語風に3分 >
目次
1.タウパの前書き <それって、やさしいからでしょう>
2.はやくしなきゃ
3.大きな声と泣き声
4.必死につくる笑顔
5.こんなわたし、も~いやだ
6.自己嫌悪のまえに
7.小さな胸にひろがる
8.まとめ <つたえよう、だきしめて>
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き <それって、やさしいからでしょう>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
またやっちゃった、
って、自分のことがイヤになるのは、
そうしたくないって、強く思ってるからでしょう。
そんなお母さん、
とってもやさしいってばぁ。
2.はやくしなきゃ
海へよった、いっぽうの隣家とのあいだのヤシ林がわです。
葉をふいた屋根を柱がささえる、火をつかう小屋がたっていました。
海がわとヤシ林がわの屋根が、地面の近くまでけいしゃし、そのしたにつまれた燃料にする枯れたヤシの実の皮を、雨からまもります。
葉をあんだマットをしき、手製の茶色いワンピースをダボッと着たトーラが、あぐらをかいて火をまえにしていました。
≪子どもがふたりで遊んでくれてるうちに、魚を焼いちゃわないと。井戸のまわりにしく石をとりにいったお父さんが、もうすぐ帰ってくるわ≫
心のなかでいい、棒をつかんだ手のこうで、額の汗をぬぐいました。
≪も~、はやくしないといけないから、火をよわくできないし、暑いったらありゃしないわ≫
いくつもの細かい石が、葉をあんだマットに、あたる音が聞こえてきます。
「えっ、もしかして、あの子たち!」
いそいで立ちあがり、母屋へむかいます。
3. 大きな声と泣き声
乾燥しきって葉が灰色をした屋根の軒を、トーラが腰をふかくおってくぐります。
床一面にしいたヤシの葉をあんだマットのやぶれたところから、したに厚くしいてある石をつかみ、ほうりなげてあそんでいます。
5才になる双子の、ムンムとミンミでした。
「こらっ、あんたたち、またやって――」
大きな声をひびかせます。
「お母さんを、そんなに怒らせたいの!いいかげんにしなさい――」
ふたりのにぎった手をひらき、石粒をおとしました。
「ふたりとも、そんなにひっぱたかれたいの――」
片手をあげてたたくまねをし、ムンムとミンミが泣きだしました。
4.必死につくる笑顔
お父さんがいそいで、軒先に厚手の布のふくろをおろしました。
腰に茶色い布をまいた姿で、入ってきます。
「どうしたんだトーラ、そんなに怒鳴って」
泣いているムンムとミンミのまえに、お父さんがしゃがみます。
「だいじょうぶだから、そんなに怖がらなくても。お母さんは、ぶったりしないから。ほら、みてごらん、やさしい顔をしてるから」
トーラが必死に笑顔をつくりました。
「お母さんは、ムンムとミンミが、大好きなんだ」
トーラが足ばやに母屋からでていきます。
5.こんなわたし、も~いやだ
母屋からかくれる、燃料をまもる屋根のかげでした。
トーラがヤシの木にむき、りょう手を幹にあてました。
「あ~もう、またやっちゃった」
額を幹にぶつけます。
「どうしてなの、ふつうに注意すればいいじゃない。どうしてすぐに、ムキになるの。こんな頭こわれて、怒鳴れなくなればいいのよ」
幹にぶつかる鈍い音が立ちました。
「あ~もう、やだ、やだ、やだ……」
6.自己嫌悪のまえに
トーラが額を幹につけ、そのうしろにお父さんが立ちました。
「おまえはよくやってる」
おだやかな言い方でした。
「つかれてるんだ。がんばってるから、つかれがたまってるんだ」
トーラの肩にいっぽうの手をおきます。
「子どもたちが、たいせつなんだろう。だったら自分を責めるまえに、子どもたちにおまえの気持ちを、ちゃんとつたえるんだ。子どもたちを安心させてやらないと――」
トーラがお父さんにむきました。
顔にりょう手をあてたまま、小さくうなずきます。
7.小さな胸にひろがる
スコールがすぎ、火をつかう小屋の屋根をたたく、雨音がとだえました。
「えっ! 雨じゃないわ。もしかしてまた――」
聞こえてきたのは、細かい石がマットに散らばる音でした。
小屋を飛びだしたトーラが、母屋へいそぎます。
ダボッとした服の裾をつまみ、軒をくぐりました。
「いいかげんにしなさい――」
大声をだしました。
「手をひらいて、石をもとにもどすの――」
立って火の面倒をみる棒を、高くかかげています。
ムンムとミンミが、泣きだしました。
トーラが気づいたように目を大きくし、棒をおろして肩から力をぬきます。
ふたりのまえにりょう膝をつき、子どもたちをだきよせました。
「大好き、大好きよ。お母さんはムンムとミンミが、一番好きなの。お母さんのところに生まれてきてくれて、とってもうれしいわ」
だきよせたまま、ふたりを揺すりました。
「ほら、こんなにうれしいの。ムンムとミンミが大好き、大好き、大好きよ」
7.まとめ <つたえよう、だきしめて>
こんにちは、どふぁらずら。
子どもに強くあたる。
自己嫌悪する間があったら、
だきしめて、気持ちをつたえるといいずら。
子供は、自分の気持ちが、わからないずら。
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