覚悟を決めていても、ゆらぐことだって……。
< 本文は:物語風に3分 >
目次
1.タウパの前書き <気持ちが決まってない>
2.時がとまったような別世界
3.頭がへんになる
4.身にしみている現実・意気ごんで現金をかせぐ
5.ぜったいにやりたい・自分で自分の足をひっぱる
6.腹がすわってない・生じる戸惑いや不安
7.目のまえの現実・暮らしがお金に支配されていない
8.まとめ <腹がすわれば、動じない>
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き <気持ちが決まってない>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
気持ちが、決まってると思ってたのに。
どふぁら兄ちゃんが、迷うなんて!
ずっと島に、
いてくれなかったら、いやだってばぁ。
2.時がとまったような別世界
ヤシの木が、縦横おなじ間隔をあけて、立ちならんでいます。
ヤシ林とちがい木々のあいだには、雑木や草がはえていません。
おなじような高さに成長した幹のさきで、葉が放射状にひらき、陽光をさえぎるシェードが、頭上をおおっているようです。
≪おいらひとりで、枯れ落ちた実を、ひろってあるくのはいいずら≫
胸のうちでいったどふぁらが、手にした実をなげました。
3.頭がへんになる
また実をほうり、実が地面にあたって、ころがる音がたちました。
≪おいらがだす音じゃ、ダメずら。なんか音が、ほしいずら≫
風がふき、葉がこすれる音がたちます。
≪そうずら。んだが、音がこの場所にあいすぎてて、別世界感が深まるばかりずら≫
地面に黒くうつるヤシの葉の影が、ゆれています。
≪影の足なみが、そろって美しい、品がいいずら。頭がへんになりそうずら≫
4.身にしみている現実・意気ごんで現金をかせぐ
どふぁらがあるいてえがく円を、小さくしながら実を、一か所に集めていきます。
≪島にくるまえは、お金に支配されたような場所に、いたずら。そこで苦闘してたおいらがいるからには、家族が今まで得ていたより、多くの現金を得てやる、と意気ごんでるずら≫
枯れ落ちた実の果肉は厚く、日に干したものを、コプラとして国が買いあげます。
≪次にくる船で、ぜったいに今までで一番多くの現金を、得てやるずら≫
大人が丸まってはいれるような茶色い布のふくろが、いっぱいになりました。
口をりょう手で持ち、上体をまえにたおして、背中にかつぎます。
5.ぜったいにやりたい・自分で自分の足をひっぱる
畑のヤシの木より、ずっと高く成長した幹のさきでひらく葉が、草のあいだをとおる道に、影をおとしています。
≪ぜったいにやってやる。家族のために少しでも多くの現金を、と思ってなにがわるい――。それなのに、それなのに……≫
ふくろの口を持つ、りょう手に力がはいります。
≪お金のことも、少しは考えてくれ。うちの女たちときたら、おかまいなしに、実をつかっちまうずら≫
果肉は、そのまま食べてもいいですが、ひと手間かけて粉末にすると、食べやすくなります。
≪ふわっとした果肉のまろやかさと、魚やイモにつける塩が相俟って、これがまたうまいずら。粉末をしぼれば、ココナッツミルク。それと塩で煮た魚。くっそー、思いだすだけで腹がへるずら≫
果肉からつくる油を、肌や髪にぬります。
6.腹がすわってない・生じる戸惑いや不安
≪おいらはアホウずら。現金のために集めてるのに、食ってぬって消費する……≫
集落にはいり、パンの木の枝葉が頭上をおおう道を、あるきます。
≪女たちさえ、女たちさえ実をつかわなければ――。おっと! 人のせいはまずい≫
枝葉のあいだから差しこんだ日が、黒い地面に白っぽくゆれています。
≪暮らしが、お金に支配されてないずら。ここにいると、頭がおかしくなるずら……≫
地面をふむ、素足に目をむけました。
≪このままここにいていいものか……。戸惑うずら。不安ずら≫
7.目のまえの現実・暮らしがお金に支配されていない
まえから、茶色い布を腰にまいた男が、あるいてきます。
どふぁらとおなじような歳と背丈ですが、がっしりとした体をしたナコです。
「なんだ、どふぁら、今日も集めてるのか。おなじこと毎日してたら、いやになっちまうぞ」
ナコが丸っこい鼻のしたを、人さし指でこすりました。
「明日は、歌の練習があるから、おどりにこい」
立ちどまったどふぁらが、上をむきます。
「うううううっ」
しゃべれないどふぁらが、大きなうなり声をあげました。
ナコが、首をかしげます。
「おいらは情けない。腹がすわってれば、戸惑いや不安におそわれないって、なんだそりゃ?」
「ううっ、うううう」
ナコが、ニヤけます。
8.まとめ <腹がすわれば、動じない>
こんにちは、どふぁらずら。
島の人のような、強く優しい心を持つ。
おいらの目標ずら。
んだが、
戸惑いや不安に襲われる。
腹がすわってないと、つらいずら。