子どもはよくても、ママは!
< 本文は:物語風に3分 >
目次
1.タウパの前書き
2.まぶたに吸いこまれる望み
3.土といっしょに飛んでいく嘆き
4.夕ぐれにまぎれる不安
5.遊具
6.ママは、気が気じゃない
7.パパの笑み
8.まとめ
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
ぼくのお父さんも、けっこうそうかも?
ちょっとのことじゃなくても、
どってことないって、感じがする。
2.まぶたに吸いこまれる望み
軒のそとが光にみち、目をほそめるほどです。
茶色い布からつくったワンピースのすそをつまみ、ツースが腰をふかくまげて軒をくぐってきました。
床にしいたヤシの葉をあんだマットをふみます。
「ねぇ、あなた。ちかいうちに、子どもたちをつれて、ピクニックにいきましょうよ」
布を腰にまいた夫のタギノが、立て肘をついた手で頭をささえ、横になっています。
「ねぇ、プララまでいってみましょうよ。あんな大きな木、子どもたちがみたら、おどろくわよ」
ツースがタギノを前にして、あぐらをかきました。
「漁から帰ってきたばかりで、つかれてるでしょうけど、なんとかいってください」
タギノが、だまったまま目をとじています。
3.土といっしょに飛んでいく嘆き
家のたつ敷地をかこむ、ヤシの木とヤシの木のあいだです。
タギノが四つ這いになり、ヤシの実の殻をつかって、穴をほっています。
「あなた、まだむこうの穴、ゴミがもうすこしはいるわよ」
ツースが、汗のながれるタギノの背中へ、声をかけました。
「でも、はやくほっておけば安心ね。ねぇ、ククリが宿題をぜんぜん、やっていかないらしいの。わたしがいったんですけど、それでもやらないから、あなたからククリにいってもらえませんか?」
ククリは5年生の女の子です。
殻のうつわに山もりになった土を、タギノの片腕がとおくへ飛ばしました。
「ねぇ、あなた、おねがい――。たのみますね」
4.夕ぐれにまぎれる不安
水平線へちかづく太陽へ、目をむけたことでしょう。
高いヤシの木から、樹液のはいった殻のうつわをさげ、ナイフをくわえたタギノが、おりてきます。
あたりに染みる夕焼け色につつまれて、ツースが幹の横にたっていました。
「あなた、たいへんなんです。昨日も今日も、ククリが小学校へいってないんです」
地面におりたタギノが、ツースの横をとおりすぎます。
「なん人かの友だちといっしょに、林であそんでるらしいんです」
ツースが、タギノのうしろを歩きます。
「おねがいです、あなたからククリにいってください」
5.遊具
床にしいたヤシの葉をあんだマットが、かれて茶色くなっていました。
その下には、長いあいだかけて細かくなって浜に堆積した、さらさらしたさんごが、厚くしかれています。
タギノが横になり、立て肘をついて頭をささえています。
「トロリもお父さんにすわってるだけじゃなくて、おねえちゃんみたいにお父さんの体にたってごらんよ」
妹のトロリが、タギノの太ももからおり、タギノの腰にたちあがろうとします。
ククリがたっていられず、お父さんの脇の下から、マットにおりました。
「そうそうトロリ、かんたんじゃないから、おもしろいでしょう。おちても高くないし」
「おねえちゃん、わたしじょうずでしょう。あっ、バランスをくずした――」
6.ママは、気が気じゃない
手をつないだククリとトロリが、お父さんの体にたって、ふらふらして今にもおちそうです。
お母さんのツースが、床をかこむようにうまった石を、つまさきでチョンチョンとけり、足のうらから土をおとして、なかへはいってきました。
≪まったくも~、お父さんたら≫
たったまま腰に、りょう手をあてました。
≪ピクニックにはいってくれたけど、子どもたちになにもいわないにも、ほどがあるわ≫
心のなかでぼやき、口にだしました。
「ちょっと、お父さん――。あなたたちも、いいかげんにしなさい」
7.パパの笑み
大人が3人、腕をひろげてつつむような立派な幹から、枝が大きなキノコのように、ひろがっています。
「パンの木は折れやすいからのぼるのは、わたしたち軽い子どもの役目なんでしょう。だいじょうぶだからね、こうやって上の枝につかまって、枝を歩くから」
ククリがいるのは、下にたつタギノの背丈の、3倍以上の高さでした。
タギノの足元には、ククリのおとしたパンの実が、ころがっています。
「あっ、やだっ!」
片足が枝からすべり、ククリがおちます。
りょう腕で受けとめたタギノが、ほほをゆるめた顔を、チラッとククリへむけ、幹へちかづきました。
ククリが、片足を幹の割れ目にのせます。
「お父さん、つぎは失敗しないから、安心して下でみてて」
8.まとめ
こんにちは、どふぁらずら。
動じない。
お父さんにとっては、どれも、
たいしたことじゃないずら。
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