贅沢なんてとんでもない、こんなの貧しいでしょ!
多くの人は、そう思うかもしれない?
< 本文は:物語風に3分 >
目次
1.タウパの前書き
2.壁のないトイレ
3.暗黙の了解
4.ほんとうにいいのか?
5.もうひとつの贅沢
6.現実
7.とりのこされるような劣等感
8.壁のない安心感
9.まとめ <ややこしい>
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
劣ってるとか、
そんなの感じないってばぁ。
友だちもみんな、たのしそうだし。
ご飯だって、おいしいってばぁ。
えっ、トイレ?
そんなの砂浜に、きまってる!
2.壁のないトイレ
白い砂浜に、ヤシの葉が影を落とし、そこにどふぁらがたちました。
≪腰にまいた茶色い布の、しりのほうをまくりあげながらと――≫
背中を海へむけて、しゃがみました。
≪ここは集落のはずれに、つきだした半島のそとがわずら。集落のこっちにちかい人たちのトイレずら。しりをそっとなでていく風が、心地いいずら≫
高いところは風がすこし強いようで、砂にうつる黒い影がゆれています。
≪一方はたちならぶヤシの木の横を、砂浜が半島のさきへつづき、もう一方はヤシのしげる島が、ずっと遠くのほうで沖へつきだしてるずら。海とヤシの木と空、ほんでもってこの、目をほそめるほどの光、きれいな光景ずら≫
3.暗黙の了解
≪おっと、おいらは島の人たちのように夜目は利かないが、視力はいい。顔がよくわかるずら。女性ずら。20代の半ばずら≫
半島のほうです。
≪木々のあいだからおいらに気づき、異性だから、それなりの距離をとってから浜へでる、暗黙のルールずら≫
紙袋のような形につくった茶色いワンピースの、おしりのほうをまくりながら、りょう膝を砂につきました。
つまさきをついた足に、おしりがかくれています。
≪背中をシャキッとのばして、姿勢がいいずら。男ならもっとちかくだから、うまくしゃべれないおいらは、大きくうなって声をかける。んだが、年ごろの女性だけに距離があっても、緊張するずら。このばあい、前をむいてる。これも暗黙のマナーずら≫
4.ほんとうにいいのか?
さんかくの白い貝殻をせおったヤドカリが、影のなかへ入ってきました。
≪潮の満ち引きがまいにち2度、足あとまでさらって浜をきれいにする、豪華なトイレずら。んだが、んだが……≫
ヤドカリは指さきぐらいの大きさで、前をよこぎろうとしています。
≪このトイレを贅沢と感じる、おいらは、おいらは……。ほんとうにこれでいいのか? 時々不安が、おそってくるずら≫
ヤシの葉の影がゆれ、ヤドカリが足をはこびます。
≪島にくる前にいた、おいらの元の世界から、どんどんおいていかれる気がするずら≫
5.もうひとつの贅沢
ヤドカリの足さきが、白い砂粒をかすかにおします。
≪元いた世界だと、きれいな壁にかこまれた広めの個室、花のいい香りがして、白いピカピカの便器が、いらっしゃいませとばかりに、カバーを持ちあげてむかえてくれる≫
どふぁらが、りょう手を頭にあてました。
≪それが、ほんとうの贅沢ってやつずら――≫
りょう手が頭をこすります。
≪ほんでもって、スッキリしたあとは、シューッとお湯が飛びだして、肛門をあらってくれるずら≫
6.現実
ヤドカリが、影のなかを遠ざかっていきます。
≪おい、待つずら、元いた世界、おいらがおきざりになるずら≫
どふぁらの横には、枯れ落ちた大きなヤシの葉からむしりとった、細長い葉が3~4枚おいてあります。
その葉にどふぁらが目をむけました。
≪長い葉をふたつにおって、Uの字をかいて丸まったところで、しりの穴をふきとるように、こするずら≫
なれた手つきです。
≪つかったら、うしろにほうって、次の葉っぱ。これがおいらの現実ずら≫
葉をつかもうとした手をとめました。
≪おっと、刺激をあたえたら、もっとでるずら≫
7.とりのこされるような劣等感
ヤドカリが影のそとへでて、貝殻の白さがましました。
≪美しいずら。贅沢なトイレずら≫
日差しをうけて島にしげるヤシの葉が、かがやいています。
≪んだが、元いた世界を思いだすと、ものすごい不安になるずら。とりのこされるようなこの劣等感……≫
ヤシの葉のあいだからでてきた白い海鳥が、沖へむかって飛んでいきます。
≪透明な海水が、透き通るようなブルーをみせる。そこへむくおいらのしり。贅沢なはずなのに……≫
8.壁のない安心感
また女の子が、ヤシの木のあいだから、浜へでてきました。
≪なぬっ、どうしたずら! 距離がちかいずら≫
女の子が砂にりょう膝をつき、服のすそをめくりました。
≪まだ、20才前ずら。マナーに年は関係ない、おいらは前をむくずら≫
大きな声で、はっきり聞こえてきます。
「どふぁらさん、ごめんなさい。ちかかったかも! お腹がいたかったから――」
どふぁらが、女の子に顔をむけました。
「ううう、ううっ」
「うん、だしたら楽になった。ありがとう」
≪女の子の歯が、白くてきれいずら。声をかけてくれるこの安心感、やっぱりいいずら――≫
「うううっ」
女の子へかえしたうなり声が、光のみちる空間へすいこまれるようです。
9.まとめ <ややこしい>
こんにちは、どふぁらずら。
はだしで暮らしてるからか、家に壁がないからか、
時々、おそうずら。
劣等感。
✨どふぁらのページの紹介 ↓ ↓