< 本文は:物語風に4分 >
目次
1.タウパの前書き
2.とっても気持ちのいい場所で
3.あの日とおなじ塩ゆでしたエイ
4.ずっとずっと昔、よこにすわって
5.海だったらイルカのように
6.心のなかで生きつづける
7.いいつけをまもるようになったのは
8.ひきつがれるやさしさ
9.まとめ
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
ぼくのひいおじいちゃんは、70なん才。
だからとっても長いあいだ、なんども、なんども、
いやな夢をみて、目が覚めたんだって。
その話を、
そのお父さんの、ひいひいおじいちゃんにしたら、
辛そうな顔をするんだってばぁ。
2.とっても気持ちのいい場所で
ヤシの木のあいだにひろがる海に、夕焼けが色をおとしはじめました。敷地のすみに、木をならべて埋めた柵のあいだから、ブタが鼻をのぞかせています。
ブタ小屋のよこでタウパがお母さんをてつだって、地面にしいたヤシの葉のマットをととのえています。
「ワーイ、今日はこんなに気持ちいいところで、ご飯が食べられるんだ。ブタがうらやましがってるみたいだ」
「いつも食べる母屋のよこより、ちょっとはなれてるけど、マットをしくだけだから、どってことないわよ」
茶色いワンピースをダボッと着たお母さんが、砂によつばいになっています。
「ほら、タウパ。3枚目もちゃんとあわせて。そう、いいわ、これでみんなで車座になれるわ」
3.あの日とおなじ塩ゆでしたエイ
タウパの両親と祖父母、曽祖父母、そしてひいひいおじいちゃんと、ひいひいおばあちゃんが、マットにあぐらをかきました。
タウパが、ヤシの葉をあんだ大きなお皿を、胸のまえに持ってあるいてきます。
「ほら、今日とれた塩ゆでしたエイの切り身だよ。メチャクチャおいしいってばぁ」
イモが盛られたカゴと、塩が山をつくった葉に、ならべてエイをおきました。
タウパが海を背にして、ひいおじいちゃんのガテとむきあうようにすわりました。
「ガテおじいちゃんが、ここで食べたいって、いったんでしょう」
ガテがほほをゆるめました。
「なぁに、たまたま今日とれた、そのエイのおかげじゃ」
ガテがタウパのうしろに広がる海に、目をむけました。
4.ずっとずっと昔、よこにすわって
タウパがかんでいたエイを飲みこみました。
「ねぇ、ガテおじいちゃん、エイがどうしたの、なんでエイのおかげなの?」
ガテの耳のまえの髪を風がゆらし、ガテが顔を海へむけたまま、髪のあたるほほを人差し指でなでます。
「ずっと昔のことじゃ。わしがタウパとおなじような歳じゃった。妹のターケが、まだいたじゃ。なぜかしらんが、ターケがここで、ブタのちかくで食べたがったじゃ。ターケはわしのよこにすわって、手にしたエイの切り身を、少しずつかじって、家族とおしゃべりしながら、おいしそうに食べとった。しあわせそうな顔をしとったじゃ」
タウパがつまんだ塩を、イモにかけました。
「ターケってちいさいころ、おじいちゃんと林であそんでて、いなくなってみつからなかった子でしょう?」
遠くへ視線をむけたまま、ガテがゆっくりうなずきました。
💦そのページは、こっち >
5.海だったらイルカのように
ガテが指先で、風のゆらす髪を耳のうしろへはこびました。
「そのころわしは、ターケとちがって、ガツガツガッツいて食べとったじゃ。そんなわしにとなりから、肩をよせてターケがいうんじゃ。お兄ちゃん、そんなんじゃ、エイがお兄ちゃんを強くしてくれないよ。みんなとおしゃべりしながら、ゆっくり食べると、エイがお兄ちゃんを強くしてくれる。海だったらイルカみたいになれるし、林だったら犬よりもはやくはしれるようになるんだから」
ガテが海のずっと遠くへむけた瞳を、ちいさくふるわせます。
「ここでエイを持ったターケから話をきいたのは、ターケのいなくなった日の、ほんの何日かまえじゃった」
ついこのあいだのような口ぶりでした。
6.心のなかで生きつづける
ガテが海をみつめ、海面の夕焼けを瞳にうつすようです。
「今朝、明け方に夢をみたじゃ。これまでにおなじ夢を、どれほどみたことか。幼いわしが林をはしっとる。うしろに妹のターケのいないのに気づいて、うなり声をあげて目が覚めるじゃ」
タウパが、かんでいたおイモを飲みこみました。
「ガテおじいちゃんのお父さんのクンおじいちゃんも、夢をみるって。クンおじいちゃんの夢は、幼いころのガテおじいちゃんとターケが、林をはしってるんだって。ふたりともとっても楽しそうにしてるんだって」
タウパがつづけて、得意げいいます。
「それにね、クンおじいちゃん、ターケがブタを家族みたいに思って、よこで食べたがるのも興味ぶかかったし、ターケの話すのを聞いてターケが、エイやイルカ、犬なんかの動物を、ちかく感じるのかもしれないなぁって、ほほ笑ましく思ったんだって。それがついこのあいだのことみたいなんだって」
7.いいつけをまもるようになったのは
ブタが柵のあいだから鼻をのぞかせ、その鳴き声にガテが、言葉をそっとのせるようです。
「肩をよせて話すターケに、わしは身を引いて、なにバカなこといってるんだって、軽蔑の目をむけたじゃ。そんなターケのいいつけを、わしがまもるようになったのは、ターケがいなくなって、しばらくしてからじゃ」
ガテが首を、ちいさくよこにふりました。
「じゃが、ターケのように、しあわせそうには食えんかった」
さみしそうにいったガテをはげますように、タウパが背筋をのばしました。
「ねぇ、ガテおじいちゃん、ガテおじいちゃんもいっしょに、食べようよ」
8.ひきつがれるやさしさ
タウパが片手にイモを、もう一方の手にエイを持っています。
「ねぇ、ガテおじいちゃん。ここにすわってるみんな、ガテおじいちゃんの話を聞きながら、ゆっくり食べてるよ。ガテおじいちゃんの話、とってもよかったし――。エイとおイモがみんなを、イルカや犬みたいに強くしてくれるってばぁ」
タウパがエイとおイモを、すこしずつかじりました。
「ぼく、たくさんかむんだ。そうするとエイやおイモがぼくの身体を、大きくしてくれるでしょう」
ターケのおしえをガテが自分の子どもにつげ、それを家族がひきついでいます。
まえにあるお皿がわりの葉に、タウパがイモとウツボをおきました。
あぐらをかいたまま、両腕をよこにのばし、それを波打たせるように上下にうごかします。
「ビュン、ビュン、ビュン」
ブタが悲鳴をあげました。
「ほら、ブタもよころんでる。エイがおよいでるみたいでしょう」
腕をうごかしながら立ちあがったタウパが、腕を組みました。
「ほらみて、たくさんかんだら、もうこんなに身体が大きくなった」
ガテがしあわせそうに、笑みをうかべています。
9.まとめ
こんにちは、どふぁらずら。
亡くなっても生きつづける。
永遠のやさしさずら。
おっと!
聞かずに、わかるのはむずかしいずら。
↓
✨どふぁらのページの紹介 ↓ ↓