どんな気持ちを、好きっていうんだろう?
その子のこと、大人になってもおぼえてるかもよ?
本文は:物語風に5分
<ふりがな> 小学3年生~
1.タウパの前書き
2.食べたいと思わないし、ねむれない
3.むねのなかがチクンとする
4.すごくきれいなはずなのに
5.どうしてかな、カニさん?
6.むねがギュッてする
7.もしかしたらわたし……
8.どうして頭にきたの?
9.それは好きだからだろう
10.まとめ
それじゃあ、物語みたいに、いくよ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
ドータは、同きゅう生の女の子。
ごはんがまずくなって、夜ねむれないほど、頭にきたんだって。
せいかくのとってもいい男の子のクイプを、
せいかくのわるい女の子が、だまそうとしたから。
だけど、
女の子があきらめて、クイプにちかづかなくなった。
そうしたら、ごはんがおいしくなって、ねむれるようになったんだってばぁ。
2.食べたいと思わないし、ねむれない
ヤシの木のあいだをとおる道を、ドータがしょう学校からもどります。
家のたつ集落にはいると頭のうえを、パンの木の葉っぱがおおいました。
下をむいてあるきます。
≪せっかく、ごはんがおいしくなって、夜ねむれるようになったのに……≫
ドータが心のなかで思いました。
≪今度は、ごはんが食べたくなくなった。夜だってまた、なかなかねむれないし≫
パンの木のあいだをとおって、自分の家のにわにはいりました。
≪わたし、どうしちゃったんだろう?≫
3.むねのなかがチクンとする
母屋の屋根は、葉っぱがかさなっていました。
その下に、あつ目の葉をあんでつくったマットをしいて、家族がねむっています。
≪どうして、目をつぶってるのに、まだわたしおきてる!≫
ドータがかた手を、むねにおきました。
≪なんだかへん。このへんがチクンとするときがある≫
かた手でむねを、そっとこすりました。
≪なんなんだろう、この感じ?≫
おきあがってよこをみます。
≪お兄ちゃん、ゆめでもみてるのかな? 顔がちょっとわらってる。いいなぁお兄ちゃん、ねむれて≫
立ちあがって、母屋からそとへでました。
4.すごくきれいなはずなのに
ヤシの木のあいだから、すなはまにでました。
≪うわっ、風がなくて、海がまったいらだ!≫
足をとめました。
≪海が空をうつして、星がいっぱい……≫
すなはまに、こしをおろします。
≪いつもなら、とってもきれいって思うのに……≫
ドータが首をかしげました。
≪どうしてだろう今夜は、星をうつす海、あんまりきれいにみえない≫
5.どうしてかな、カニさん?
ドータがかた手で、むねをなでます。
≪だめだ、なおらないや≫
その手で、かるくたたきました。
≪すなはまにきたのに、むねがチクンてする≫
星のあかりが白いすなはまをてらし、白っぽいカニがたくさんあるいています。
≪カニさん、おしえて≫
ドータが、息を大きくすいました。
≪わたしどうして、ねむれないの? ごはんだって、たくさん食べたほうがいいのに。ねぇどうすればいいの、おしえてよカニさん≫
6.むねがギュッてする
ドータのうでの長さと、おなじぐらいの魚が、とびあがりました。
星のひかりをうけた魚が、シルバーにかがやきます。
≪あっ、おちて水面をゆらして、そこがみどり色に光った≫
ドータがハッとしたように、りょう目を大きくしました。
≪わたし今、とってもきれい、って思った≫
りょう手をむねにあてました。
≪思ったと同時に、クイプの顔がうかんだ。ここがギュッ、てする。なんかくるしい≫
むねにあてた手を、なでるようにうごかしました。
7.もしかしたらわたし……
母屋のよこの地面に、ヤシの葉をあんだマットがしいてあります。
そこでドータとむかいあって、ドータのお兄さんがあぐらをかいて、朝ごはんを食べます。
「そういえばぼく、きのうもクイプと話したんだけど」
ドータが顔をいきおいよく、お兄さんにむけました。
「ないないない」
お兄さんが自分の顔のまえで、かた手をふります。
「ドータがなかよくしたいなんて、クイプにいってないから。安心しろよ」
ドータが下をむきました。
「もしかしたら、わたし……」
「なんなんだよ、先をつづけろよ」
8.どうして頭にきたの?
朝ごはんをおえ、ドータが立ちあがりました。
その顔を、お兄さんがみあげます。
「ドータおまえ、もう食べないのか!?」
「だって、あんまり食べたくないし、はやくしょう学校にいきたいんだもん」
「クイプがいるからだろう?」
ドータがパッと、目を大きくしました。
「………」
「クイプに好かれようとしてた女の子に、ドータがどうして頭にきたのか、ほんとうにわからなかったっていうのか?!」
💦 そのページは<ルビなし> こっち >
9.それは好きだからだろう
ドータが足をすこしまえにだし、お兄さんにちかづきました。
「わたしがどうして頭にきたかなんて、そんなのわからないよ」
ドータが息をはきだし、りょうかたがさがりました。
「その女があきらめてわたし、ふつうになったけど、また……」
ドータがうつむきました。
「……もしかしたらわたし、クイプとなかよくしたいのかもしれない」
お兄さんがあきれたように、首をよこにふります。
「もしかしたらじゃなくて、食よくがないのは、クイプが好きだからだろう」
10.まとめ
やぁ、どふぁらずら。
はじめて人を好きになる。
そりゃあ、
どんな気持ちになるか、わからないかもしれないずら。
おっと!
こっちは、好きでいたずら。
↓