妖精1:人をもてあそび、人を感じさせる




*目にやさしい背景色を使用*











人ってただでさえ、めんどうくさいところがあるのに、

そこに妖精が、顔をつっこんだら。







 

< 本文は:物語風に5分 >

 

目次

1.タウパの前書き

2.信じない・いやな感じの人たち

3.気のしれたヤツとの再会

4.うつくしい妖精

5.これで信じてもらえる・ふたりだけの秘密

6.気のしれたヤツからのひどい仕打ち

7.たたり

8.人間なんてクソくらえ

9.もたらされる幸運

10.よろこばれ、人ってわるくない

11.人をいやにさせられ・よく思わされ

12.まとめ








それでは、物語のように、どうぞ














 

― そこは、さんご礁にかこまれたのしげる島 ―







 

1.タウパの前書き


ツングツングって、大人にしかみえないらしい。

どうして、

子どもには、みえないんだろう?

ぼくも、みてみたいってばぁ。

 
















2.信じない・いやな感じの人たち

海にそうように、ヤシの木のあいだを、道がつづいています。

集落にはいると、パンの木の枝葉に頭上がおおわれ、道の両側にそれぞれの家の敷地と小さなヤシ林が、交互にならんでいました。

「ツングツングかぁ、聞いたことがあるぞ。たしか、幸運をもたらすとかって、いわれてるよな。それで、いいことがあったのか?」

集落のだれもが、おなじようなことをいいました。

30代半ばのロイナイが、首を横にふります。

「いや、いいことなんて、なにも」

相手がニヤッ、とバカにするような表情をします。

ロイナイが、しっかりした口調でいいました。

「だが、すぐにいいことがあるとは、限らないじゃないか。いる場所をおしえる。みんなが会えば、集落中に幸運がくるんだ」

ですがだれも、ロイナイを相手にしません。

 
















3.気のしれたヤツとの再会

パンの木の枝葉におおわれた道は、緑のトンネルのようです。

幼い子が3人、しゃがんで棒をもち、地面に絵をかいています。

その横をロイナイが、肩を落として通りすぎます。

≪よろこぶと思って、いってるのに……。どいつもこいつも、いやな感じだぜ≫

「よお、元気そうじゃないか」

ロイナイが、ふりかえりました。

「おおギルモ、そういえばお前、しばらくみなかったなぁ」

ギルモはロイナイより若く、30才をすぎたぐらいです。

「ふたつ先の集落に親戚がいて、そこにいたんだ。どうだまた、いっしょに漁へでもいくか?」

「それもいいが、その前に、ツングツングに会いにいかないか? みつけたんだ。会えば幸運にめぐまれるはずだ」

ギルモが、首をかしげました。


















4.うつくしい妖精

ロイナイのうしろを、ギルモが歩いています。

道からそれて、草むらを進みました。

「このあたりなのか?」

「ああ、もうすぐだ」

「もっと島の先端に、近いのかと思ったら、そうでもないんだな」

「外海にでる手前だ」

ヤシの木のあいだに、雑木がしげっています。

枝葉のあいだを通り、木々にかこまれた中へはいりました。

ロイナイが立ちどまり、その横でギルモが、目を大きくしました。

「なんだこいつ、こいつが、ツングツングか!」

水色をしたふたりの膝の高さぐらいの棒のようです。

ギルモが、顔を前にだしました。

「透き通って、海の水みたいじゃないか。それにしてもきれいだ」


















5.これで信じてもらえる・ふたりだけの秘密

ツングツングを前にしています。

ロイナイがギルモの一方の肩に、手をおきました。

「これで集落のみんなが、信じてくれる」

ギルモが、ロイナイに顔をむけます。

「まだ、内緒にしておこう。俺たちに幸運がくるまで、待つんだ」

ロイナイが、深くうなずきました。

「じゃあそれまで、これは俺たちだけの秘密だ」

ギルモが、目を輝かせました。

「ああ、だれにもいわない。ふたりだけの秘密にしよう」

 
















6.気のしれたヤツからのひどい仕打ち

次の日、ツングツングに会いにいこうと、ロイナイがギルモを訪ねました。

ですが、不在だったので、仕方なくひとりできました。

すると雑木の中から、男たちの声が聞こえます。

「おい、なにやってるんだ、やめろ!」

ギルモがいい、男の声がつづきます。

「こいつ、くねくねうごきやがって、おもしろいじゃねぇか。砂が通りぬけて、むこうへ飛んでくぜ」

「いいかげんにしないか。たたりがあるぞ」

「そんなもん、信じられるか。ほらみろ、消えちまった」

ロイナイが、枝葉のあいだを通りました。

ツングツングがいません。

ロイナイがギルモをにらみ、ギルモが顔の前で両手をあわせます。

「わるい、自慢したくて、つい、こいつらにいったんだ」

ふたりとも、20代後半といったところです。

「へっ、そんなにムキになることじゃねぇだろう」

ひとりがいい、ふたりとも外へでていきました。
















 

 

7.たたり

ふたりが、雑木の外へでた直後です。

「いたたたたっ」

「ううう、いてぇ、なんだこりゃあ」

いそいでロイナイとギルモが、外へでました。

とたんにふたりも、お腹に手をあてて、苦しみはじめます。

4人とも地べたに横になり、からだをくの字にまげたかと思うと、のたうちまわりました。

痛みにたえかね、気を失います。

その夜、ロイナイ以外の3人の全身が、かくれるほどの野ネズミがたかりました。

ネズミがいっせいに、手足の爪をたて、激しく肌をこすります。

「いててててててっ」

からだからネズミを払い落しながら、立ちあがったかと思うと、3人とも走りだします。

「たすけてくれ、かんべんしてくれぇ」

3人は、全身の爪あとから、血を流しています。


















8.人間なんてクソくらえ

夜が明け、ロイナイが目を覚ましました。

「ちぇっ、だれもいねぇ、ギルモまで先に帰りやがって。もう、人間なんてクソくらえだ」

立ちあがって、雑木のあいだを通り中へはいりました。

「オッ! もどってるじゃねぇか」

ツングツングが、透き通るような水色をしています。

「だがもう、だれにもいえねぇ」

ロイナイが、ニコッとしました。

「おっ、まただ。ツングツングの上のほうが、明るくなったり暗くなったり。俺になんかいってるみたいだなぁ……?」

ロイナイが、腕を組みました。

「でも、わからねぇなぁ……。わるいが、またくるよ」


















9.もたらされる幸運

ロイナイが漁をする網と、布の袋を肩にかけて、家をでました。

その日に家族が食べる、魚を獲ります。

漁をしているロイナイが、いぶかりました。

「なんだ、なんだ、またか、今日はどうなってるんだ」

網に、たくさんの魚がかかっています。

次に仕掛けた網も、大漁でした。

茶色い布でできた袋は、小柄な大人ならいれてかつげるほど、大きくて頑丈です。

その袋が、いっぱいになりました。

かついで帰るのが、たいへんです。

≪もしかしたら、これがツングツングのもたらした、幸運てやつか!?≫

ロイナイが、上半身を前にかがめて歩きます。

≪よし、明日もやって、大漁だったら、ツングツングに会いにいってみるか≫

















 

10.よろこばれ、人ってわるくない

ロイナイが、ツングツングを前にしました。

「なんとか集落の者も、幸運にしてもらえないだろうか?」

ツングツングの上のほうの明るさが、変化します。

「おっ、ご利益があるってことか!」

その翌日から、大漁ではありませんが、十分すぎる魚が毎日獲れました。

どの家でも漁以外の、作業があります。

ロイナイはその日、漁へいけなかった家へ新鮮な魚を、子どもにとどけさせました。

とどけるのは毎日、2軒か3軒ですが、集落の者がロイナイに感謝します。

ロイナイの奥さんがいいました。

「うちは干物が、山ほどできてるわ。漁を休んだら?」

「いや、魚がとれているうちはいく」

それからなん日かして、強い風がふいて海があれ、その日は漁ができませんでした。

≪ご利益が、これで終わるのかもしれない……≫

ロイナイは次の日から、家族が食べる数ぐらいの魚を、獲って帰りました。

















 

11.人をいやにさせられ・よく思わされ

ロイナイとギルモのすねが海水を飛ばし、ふたりが岸へむかいます。

ギルモが謝りにきて、ロイナイが許しました。

ロイナイが網を、ギルモが漁獲のはいった布の袋を、肩にかついでいます。

海からでたふたりが浜をあがり、ヤシの木の横をすぎました。

足をとめたギルモが雑木の根元へ目をむけ、ロイナイの視線がそこへ飛びます。

ツングツングが立っていました。

ギルモが、ブルッとからだを振るわせます。

≪俺はもうかんべんだぜ。近づきたくもねぇ≫

ロイナイが、網をつかんだ手に力をいれました。

≪集落のやつらを、いやにならなければ、いいと思う必要もない≫

ふたりがツングツングから目をそむけ、歩きだします。

≪お前に会うのも、ご利益も、もうごめんだぜ……≫







 

12.まとめ

 
 




こんにちは、どふぁらずら。

90年以上生きた、うちのじいさんがいうには、

ツングツングは、人をもてあそぶ島の妖精ずら。

んだが、

30年しか生きていないおいらは、

うざく感じたり、いいなと思ったり、

人ってのを、

あらためて感じさせる妖精に思うずら。




おっと!

こっちも人を感じるずら。








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