根気よく聞いてくれれば、らくになる。
< 本文は:物語風に4分 >
目次
1.タウパの前書き <気持ちと話せたらいいのに>
2.胸がすごくくるしかった・笑ってもさみしそう
3.胸の中で、いっぱい思っていること
4.家族の迷惑になるから
5.文句を言われなくてつらい・本当の気持ちじゃない
6.まだ楽になっていない
7.話したことで気持ちの整理がつく
8.気持ちが楽になった
9.おねがいするから・信じてもらうから
10.まとめ <たすけになれればいい>
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き <気持ちと話せたらいいのに>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
リッ君から聞いてほしいって、たのまれた。
つらそうなんだってばぁ。
ぼくで、役にたつのかな?
リッ君の気持ちと、話せるといいな。
2.胸がすごくくるしかった・笑ってもさみしそう
浜にできたヤシの葉の影に、タウパとリッ君があぐらをかいて、ならんで座りました。
20代半ばのリッ君は、タウパからするとときどき話す、話しやすいお兄さんです。
リッ君が、少し先の砂をみています。
「死にたい、って思う」
タウパが目を、大きくしました。
「今、なんて言ったの!」
「生きていたくないんだ」
リッ君が下をむき、タウパが勢いよくたちあがります。
「ダメ、死ぬのなんて、ぜったいにダメ」
「生きてたって、家族の迷惑に、なるだけなんだ……」
「迷惑とかって、ぼくにはわからないけど、リッ君が死んだら、リッ君のお父さんやお母さん、姉弟とか、家族のみんなが、かなしむ」
タウパがたったまま、両手をギュッとにぎりました。
「ぼく、生まれたブタが死んで、すごくかなしかった。何日しか、いっしょにいなかったけど、それでも胸がすごく、くるしかった」
リッ君の顔がタウパにむき、ほほ笑みました。
「そんなさみしそうな顔、しないでよ。死んだらぜったいに、ダメだからね」
3.胸の中で、いっぱい思っていること
タウパがリッ君の顔を、下からのぞきました。
「リッ君、もしかしたら胸が、くるしいんじゃないの?」
リッ君がタウパに顔をむけ、またほほ笑みます。
≪さみしそうなんだってばぁ≫
そう思ったタウパが、口にだして言います。
「リッ君は胸の中でいっぱい、いっぱい、なにかを思ってる」
「やっぱりタウパは、やさしいなぁ……」
リッ君はふいてくる風のように、おだやかな言い方をしました。
「どふぁら兄ちゃんにうれしいこと、いっぱいしてもらって、どふぁら兄ちゃんを、よろこばせられなくてつらかった。今のリッ君は、そのときのぼくとおなじかな、と思って」
お尻をずらして、体をリッ君のほうへむけました。
「でもね、でもね、ぼくはどふぁら兄ちゃんに、自分の気持ちを話した。そうしたら自分が、かっこ悪い気がして、もっと泣いちゃったけど、言ったら胸が楽になった」
リッ君の笑みが、少し大きくなりました。
4.家族の迷惑になるから
リッ君が、まっすぐ海をみています。
「オレが海で、魚の群れをみつけるのも、魚を網へ追いこむのも、上手くできないから、兄貴や親父は、オレを漁へつれていこうとしない。オレが漁がへたくそなのは、タウパもしってるよね」
タウパが、小さくうなずきます。
リッ君の視線が、海から浜へむきました。
「オレはもう、何年も前から、漁へいってない。それなのに、魚介を食べてる。獲らないで、食べるだけなんだ。オレは役にたたない」
リッ君がうつむきました。
「だからオレは、家族の迷惑になるだけなんだ」
タウパが、眉をよせました。
「リッ君の胸の中に、いっぱい、いっぱい、つまってるのって、死にたい気持ちじゃないよね?」
リッ君の視線は、下をむいたままです。
5.文句を言われなくてつらい・本当の気持ちじゃない
リッ君の口がうごきました。
「食べてるだけで、役にたたないのに、家族のだれもオレに、文句を言わない」
「リッ君の胸につまってるのって、文句を言ってもらいたい、って気持ちなの?」
リッ君の耳のよこの髪を、風がゆらしています。
「考えたことあるんだ。家族がオレに、文句を言ったら、って」
リッ君が、ゆっくり息をすいました。
「いつも文句言われたら、それもイヤになるだろうな、って思った」
「だったら、リッ君の胸にいっぱい、いっぱい、つまってる気持ちって、なに?」
6.まだ楽になっていない
タウパが真剣な目を、リッ君の横顔にむけています。
「ぼくは、どふぁら兄ちゃんに、本当のことを言ったから、楽になった。リッ君はまだ、楽になってない。本当の気持ちを、言ってない」
タウパが両手を強くにぎりました。
「リッ君が聞いてほしいって、ぼくをここにさそったんじゃないか――」
リッ君は下をむいたまま、砂をみつめています。
タウパが、にぎった手をゆるめました。
「ぼくが子供だから、ダメなの?」
リッ君の顔が、タウパにむきます。
「子供だからじゃないよ。ごめん、タウパの言うとおりだ」
7.話したことで気持ちの整理がつく
リッ君が海のとおくを、みつめています。
「リッ君、どうしたの? リッ君の目に涙が、いっぱいたまってる。どうして泣くの? リッ君があやまるようなこと、ぼくが言ったから」
涙がこぼれ、リッ君の手の甲が、ほほをぬぐいます。
「タウパのせいじゃない」
リッ君の肩がふるえ、タウパが片手でリッ君の腕に、そっとふれました。
「タウパは、タウパは、本当にやさしいね」
リッ君の肩のゆれが、大きくなります。
「オレは……、オレは……」
リッ君が鼻をすすりました。
「オレは……、漁へいきたいんだ。漁がうまくなりたい。兄貴や親父といっしょに、漁へいきたい。家族の役にたちたいんだ」
タウパがリッ君の腕にふれていた手を、自分の胸にあてました。
≪リッ君……胸がいたいよ。リッ君の気持ちが、突き刺さるみたいに……≫
タウパが胸にあてた手を、強くにぎりました。
≪リッ君……そんなに泣いて、ずっとくるしかったんだね……≫
8.気持ちが楽になった
タウパは少しのあいだ、胸にあてた手をにぎったままでいました。
そしてその手で、リッ君の腕にふれます。
リッ君の顔が、ゆっくりタウパにむきました。
≪リッ君が、笑ってる。ほんの少しだけど、笑ってる≫
タウパが口元を、ゆるめました。
≪楽になった。リッ君が楽になった≫
タウパはたちあがって、飛びあがりたい気持ちでした。
リッ君の腕においたタウパの手が、リッ君の腕をそっとにぎります。
リッ君の笑みが、ほんの少し大きくなりました。
9.おねがいするから・信じてもらうから
タウパがリッ君の腕をにぎる手に、力を入れました。
「リッ君、いっしょに漁へいきたい、漁がうまくなりたいって、家族のだれかに言える?」
リッ君の視線が、砂へ落ちました。
タウパがたちあがって、砂をけります。
「タウパ――、どこへいくの!」
日向にでたタウパが、足をとめました。
「ぼくがリッ君の家族に、おねがいするから」
タウパが走りだします。
「子供の言うことでも、ぜったいに信じてもらうから」
10.まとめ <たすけになれればいい>
こんにちは、どふぁらずら。
思いつめて、死にたくなる。
そんな気持ちによりそうのは、むずかしいずら。
んだが、
よりそうことで本人は、気持ちの整理がつく。
死ぬ必要なんてなかった。
たすけになれたら、いいずら。
おっと!
こんなたすけもあるずら。
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