子どものころから仲がいいのを、知っている母親。
息子をしんぱいして……。
< 本文は:物語風に4分 >
目次
1.タウパの前書き
2.重そうに下をむいて
3.あなたにしかたのめない
4.たまにはいいじゃないか
5.重症だな
6.海水のかたまり
7.あとは自分でかんがえろ
8.まとめ
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
ぼくは、仲のいいともだちが、たくさんいる。
みんな、
掛け替えのないともだちに、なったらいいってばぁ。
でも、
掛け替えのないともだちって……?
2.重そうに下をむいて
真っ白な砂の干潟に潮が満ちはじめ、海のうすい縁が、うしろからおいかけてくるようでした。
ヤシの木のしげる平坦な陸地にむかって、漁獲を背中にかつぐ40代のトージと、トージと同年代のロギロが、魚をおいこむ網を肩にかけてあるきます。
≪多少うるさくいったが、おれは息子のワグナを家の建てられる一人前の男にしようと、父親としてあたりまえのことをしてただけだが……≫
ふたりともしめった砂を素足でふみ、ロギロが心のなかでつづけていいます。
≪おれが小学校の教室や集会場を建て替えたりするときの、グループのリーダーを務められるようになったのは、おれの父親がみえない腕で、おれを丸ごとだきしめておしえたからだと。それはいったいどういうことなんだ?≫
漁獲よりずっと軽い網を重そうに、下をむいて足をすすめました。
≪おじいさんのいうことだから、ただしいんだろうが、それにしてもおれが息子のワグナを、丸ごとだきしめられるまで、ワグナに近づくなとは……。そんなにおれはワグナにまちがった接し方をしてたっていうのか……≫
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3.あなたにしかたのめない
年のいった女が、葉をふいた屋根の軒先にたって膝にりょう手をつき、母屋のなかへ顔をむけます。
「トージ、わるいね、ちょっと」
手招きをしたロギロの母親のまえに、腰をふかくまげて軒をくぐったトージがたちました。
「息子のロギロなんだけど、おじいさんにきつくいわれたの。それでなんだか、思いつめてるみたいで……」
トージが、小さくうなずきました。
「なるほどそれで。いえね、昨日いっしょに漁にいったんですけど、いつもは帰りに漁獲のはいった袋と、それよりずっと軽い魚をおいこむ網を、とちゅうで交代してかつぐんです。それなのにとうとう、ロギロのやつ一言も口をきかないで、集落まで帰ってきましたから。へんだと思いましたが、昨日はなにも聞きませんでした。わかりました。ロギロと話してみます」
「せわをかけるけど、おねがい。こんなことトージにしか、たのめないから」
4.たまにはいいじゃないか
ヤシの木のあいだをつづく白っぽい道に、ヤシの葉の影が黒くうつっています。
風にそよぐ影を、ふたりが褐色をしたごっつい足の甲で、ふみつけました。
「それにしても、トージの得意なカツオやマグロじゃなく、サザエを獲りにいこうとは、どういう風の吹きまわしだ?」
口をうごかしたロギロが、顔を横へむけます。
「いいじゃないか、たまには女や子どものする、漁へいったって」
笑みをうかべるトージが、つづけていいます。
「いい年をして、説教をうけたんだってな。おまえ、なにを悩んでる?」
「………」
視線をおとして足を進めるロギロに、トージが顔をむけました。
「深刻そうだな。そんなにむずかしいことなのか?」
💦 トージのカツオ漁のページは、こっち >
5.重症だな
ヤシの木のあいだから、砂浜へでました。
「おまえ、なんだこれは? 波をかぶってるじゃないか! もっと潮が引いてるときにくるだろう」
そういってロギロが、トージをにらみました。
「潮の加減ぐらい、おれがおまえを誘ったときにわかるだろう。ここに着くまで気づかないとは、おまえ重症だな。ほら、サザエを獲りにいくぞ」
ふたりのあるく潮が引いてあらわれた赤茶色をした岩盤には、ところどころサンゴが根付いています。
沖へすすむと岩盤からでた、足の指がならぶようでした。指と指のあいだが、大人がたてないほどの溝になり、指のように突きだした根が、波をかぶっています。
その1本をトージが沖へすすみ、しゃがむと同時に岩をつかんで、波を頭からかぶりました。
岩のあいだから獲ったサザエを、ロギロにむけます。
「ほらみろ、ちゃんと獲れるだろう。険しくて女や子どもにはできない漁だ。おまえもやれ」
6.海水のかたまり
根をすすんだロギロが、心のなかでいいました。
≪波のやろう、つええじゃねぇか。うっ!≫
波にたたかれたロギロが、根のうえをころがります。
≪いてぇ、いてぇ、いてぇじゃねぇか、あっちこっち岩にぶつかりやがる≫
たちあがったロギロが、トージに目をむけました。
≪あのやろう。うまいことサザエを、獲ってるじゃないか。くっそ~、おれだって――≫
根を沖へむかい、腰をおとしてりょう手で岩をつかみます。
≪おっ、サザエがいるじゃねぇか≫
片手をのばし、白く泡だった海水のかたまりが、ロギロを襲います。
≪見失っちまった。いてぇ、いてぇ、いてぇ。くっそ~、片手をはなしたせいで……≫
7.あとは自分でかんがえろ
根をかえながら漁をしたふたりが、ヤシの葉の黒っぽい影をふんであるきました。
一方の肩のまえで袋の口をにぎり、袋の3分の1ほどはいったサザエが、背中でふくらんでいます。
「なぁトージ、気持ちいいもんだな。ああしてサザエを獲るのも、わるくない」
「バカをいうな。おまえにつきあうのは、くろうする」
「わるかったなぁ。ところでおまえ、みえない腕で丸ごとだきしめるって、どういうことだかわかるか?」
「なんだ、そんなことで。まぁおまえなら、悩むのもわからんでもない」
「わかるなら、おしえてくれ」
「ヒントならやる。忍耐だ。あとは自分でかんがえろ」
「………」
白っぽい道にゆれる黒っぽい影を、ごっつい足の甲でふんであるきました。
8.まとめ
こんにちは、どふぁらずら。
掛け替えのない、ともだち。
いつの間にかいると、いいずら。
おっと!
こんなふたりは将来、どうなるずら?
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